4行まとめ
・燃料交換機引き上げ成功。
・引き上げた燃料交換機の下の燃料集合体4体のハンドル部が変形。
・作業前日、30代作業員男性が死亡。
・福島第一原発、沿岸地域は霧が多い。
3号機FHM(燃料交換機)引き上げ成功!!
8月2日、福島第一原発3号機使用済み燃料プールから、FHM(燃料交換機)20tの引き上げが成功した。
作業開始: 2日11時55分 (燃料交換機を吊りあげた時刻)
作業終了: 2日13時18分 (燃料交換機を地面に下ろした時刻)
関連資料
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燃料集合体のハンドル4体が変形
燃料交換機を撤去し、その下にあった燃料集合体の調査が始まった。
水中カメラで4日、調査したところ、燃料集合体4体のハンドル部が変形していることが発見された。
関連資料: 3号機使用済燃料プール内の水中カメラによる調査結果
今後、燃料取り出しにおいて、ハンドル部が変形した燃料集合体をどうやって取り出すか、検討されるという。
図でもわかるとおり、水中カメラでの調査箇所はまだ一部で、始まったばかりである。
燃料交換機20tが落下していた部分は下記である。
もっと重量のある部分が落下していた部分の下の燃料集合体がどうなっているか、調査はこれからである。
吊り上げ後に公表された耐荷重
筆者は、養生ラックの耐荷重、燃料ラックの耐荷重を数週間、質問し続けたが、作業終了後に回答が出た。
ここにまとめる。
【起こし】FHM引き上げについて、まともに説明しない東京電力
耐荷重 | |
既存養生ラック | 750kg |
新設養生ラック | 12t |
燃料ラック(20本タイプ) | 28t |
燃料ラック(30本タイプ) | 85t |
1日に30代作業員男性が死亡
この2日、日曜日の作業が行われる前日の1日土曜日に、30代作業員男性が死亡した。
筆者が現場作業員の取材したところ、鹿島の下請け会社の方で、凍土壁の凍結管を掘る作業をされていたという。
1日、6時から9時に作業をし、Jヴィレッジまでバスで戻り、降車した際に体調不良を訴えた。
その後、いわき市立総合磐城共立病院に搬送され、12時59分に死亡が確認された。
東京電力は「作業と死亡との因果関係がわからない」とし、詳細は公表していない。
筆者が現場に取材したところ「熱中症と聞いている」という声をいくつか聞いた。
例年、福島第一原発の作業は、熱中症で倒れる方がとても多い。
毎年、対策は強化しているが「それでも、熱中症で体調を崩す人間は多い」とのことであった。
2013年度は、毎日3000人程度だった作業員は、2014年度には5000~6000人になっている。
2015年度、今年は日々敷地内で作業する方々は、7000~8000人に増えている。
熱中症対策をしても、やはり熱中症に倒れる方々が増えている、というのは、作業されている方々が増えている実態もあるのだ。
福島第一原発では、熱中症は気温ではなく、暑さ指数、WBGT(湿球黒球温度)というもので管理する。
(環境省: WBGTとは 人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標である。)
2015年の熱中症対策は、統一ルールとして、
WBGTが25℃を超えると、連続作業2時間以内
WBGTが30℃を超えると、作業禁止
となっている。
当日の凍土壁作業のWBGTはどうだったか。
6時から9時の測定は下記のみだという。
巡回している人間が作業場所のWBGTを測定するので、測定時刻は3回ということであった。
時刻 | WBGT |
6時 | 22℃ |
7時 | 25℃ |
8時半 | 27℃ |
筆者が取材したところ、東京電力では、前日に環境省が発表するWBGTで作業計画を立てる。
その環境省が発表するWBGTのうち、浪江町のものを使用するという。
実測を見ると、下記のようになっていた。
6時~9時の作業というが、8時の段階で、浪江町は作業禁止のWBGT30℃を超えている。
WBGT30度を超えても作業をする場合は、「主管部に熱中症対策の強化を届けて作業許可を受ける」というルールになっている。
亡くなった作業員は、クールベストは着用されていたが、WBGT30℃以上の強化対策をしたものではなく、通常のものだったという。
前日の予報の段階、作業計画を立てる段階でのWBGTはどうだったのか。
WBGT25℃を超えれば連続作業2時間以内ということだが、6時~9時の間に、休憩時間はどうとったのか。
筆者は東京電力に質問を重ねたが、全て「死亡と熱中症との因果関係はわからないので回答しない」ということであった。
熱中症対策として、作業前、休憩時に体重・心拍数なども測定する。
作業前に血圧やアルコールチェックもする。
そのような情報も東京電力は把握しているのか、把握した上で熱中症との因果関係はわからないと回答しているのか、と質問すると
「情報を把握しているかどうかも回答しない」とのことであった。
週末は、福島第一原発ではほとんど作業は行われていない。
しかし、汚染水対策に関するもの、凍土壁の凍結管掘削などは土日も行われている。
それほど喫緊の課題だからだ。
8月2日のFHM(燃料交換機)引き上げ作業は、「万が一のことを考え、敷地内の作業は全て中断して作業員は退避」というものであった。
それが現場に通知されたのは、7月第4週である。
週末の日曜が作業中断となったため、1日の作業計画にしわ寄せは無かったのか。
何にせよ、福島第一原発の作業が非常に過酷なものであること、
この猛烈な暑さの中、タイベックを着込み、全面マスクを付けての肉体労働がいかに危険なものであるかを忘れてはならない。
1日にお亡くなりになった作業員の方のご冥福をお祈り申し上げる。
2日の作業中は濃霧の中
2日の作業は筆者もかたずをのんでライブカメラを注視していた。
しかし、濃霧でほとんど確認できなかった。
それでも、早朝や10時台は霧が晴れ、現場の確認できた。
作業中は、濃霧で見えなかったが、無事、作業が完了したことは、本当に喜ばしい。
しかし、筆者がライブカメラを見ている間「この霧は燃料が地下水に触れて発生しているものだ」という内容のツィートをいくつか見た。
このような質問を筆者はたびたび受けるが、燃料が格納容器の底部を突き抜け、地下水に直接触れているとは思っていない。
様々なパラメータから、現場の作業員、プラントメーカーへの取材、福島第一原発事故の対策に批判的な研究者に取材を重ねてそう判断している。
福島第一原発のライブカメラを見ると、度々、霧が発生している。
この付近の、web上で見ることができるライブカメラをチェックするだけでも、このあたりの霧の状態がわかるであろう。
いくつか参考にあげる。
福島第一原発のライブカメラで霧の状態が酷かった8月2日、あちこちのライブカメラでも霧が確認された。
また、そのような状態のとき、気象庁でも濃霧に関する注意が出ている。
2日から3日昼前にかけて、福島県の浜通りの広域で「濃霧による視程障害に注意」 と気象庁は呼びかけていた。
福島第一原発事故の情報は、隠ぺいされることが多く、また印象操作もされ発表されることが多い。
2011年から取材を続けている筆者はたびたびそう思う。
発表される情報を疑うことは重要である。
しかし、無闇やたらと疑うことは、全てを鵜呑みにすることと、思考停止という意味で近い。
2013年に東海村Jパークのハドロン施設にて、放射性同位体漏えいの事故があった。
その件を取材し、記事にしたとき「福島第一原発由来なのに、東電の手先め!」という批判が来た。
今回のライブカメラの濃霧に関しても、「東電が言う『霧』という情報を信じるなんて幸せな人だ」という批判が来た。
疑うことが重要なのはもちろんである。
しかし、疑ったそのあとに、そこから、自分で知り調べ、考えることが最も重要なのだと筆者は思う。
そこで『調べる』ということは自分の考えに近い情報を集めることではない。
筆者も、客観性や実証性を無視せず、知り調べ、考えていきたい。
廣渡教授によると「客観性や実証性を無視して、自分の思うがままに世界を理解」してしまう態度は、安倍首相と同じであり、
反知性主義の愚民政策に、まんまとやられていることになるのだ!!
(【起こし】安倍首相「戦争に巻き込まれることは絶対ない」→理解していないバカか、ごまかす嘘つき より)