3行まとめ

・3号機の大型ガレキ撤去で最大のもの、燃料交換機(35t)の引き揚げは「7月後半」とだけ説明し具体的な日にちは公表していない。

・3号機の使用済み燃料プール内は、燃料棒が566本ある。

・燃料交換機引き上げの作業をする日は、福島第一原発の敷地内の他の全ての作業は中断する。

→そのため、現場にだけ8月2日(日)に引き揚げ予定と通知。

 

燃料交換機引き揚げ。(操作卓の落下を踏まえて)

2015年7月15日、福島県の「廃炉に関する安全監視協議会(略称、廃安協)」平成27年度第4回において、燃料交換機引き上げの資料が発表された。

3号機使用済み燃料プール内からのFHM本体撤去について ※FHM… Fuel Handling Machine、燃料交換機

筆者は驚いた。近隣の日にちの東電定例会見では、一切この資料は配布されていない。

3号機の大型ガレキ撤去は重大なトピックで、進捗状況は今まで逐一、報道配布資料とされていたが、

この燃料交換機引き上げについては、報道配布資料となっていないのである。

 

3号機の大型ガレキ撤去は、昨年8月から始まったが、まず第一歩の、燃料交換機の捜査操作卓の引き上げでは失敗し、

燃料棒が入った燃料ラックの上に落下させた、という事故を起こしている。

・2014年8月29日に、操作卓の撤去作業中、落下させた。

3号機使用済燃料プール内 ガレキ撤去作業中における 燃料交換機操作卓の落下について

・2014年12月17日にガレキ撤去を再開した。

3号機使用済燃料プール内瓦礫撤去作業中における燃料交換機操作卓他の落下事象の 原因・対策及び再開について

 

FHM(燃料交換機)引き揚げの危険性

3号機使用済み燃料プールの燃料棒を取り出すために、まず、プール中のガレキを撤去せねばならない。

その中で、もっとも重量があるものがFHM(燃料交換機)である。

FHM本体は35tであると今まで表示されていた。

 

大型ガレキの撤去の危険性、それは、引き上げる下には、燃料ラックの中に燃料棒がしきつまっている、ということである。

 

 35tのFHM(燃料交換機)の引き上げについての主な危険性は、

①引き揚げの際、落下して、燃料棒が破損する。

➁引き揚げの際、使用済み燃料プールのゲートに触れ、プールの水が漏えいする。

の2点である。

 

FHM(燃料交換機)の落下対策

操作卓(400kg+170kg)引き揚げの際は、落下した。

その知見を踏まえた対策として、養生ラックがある。

燃料棒の上に敷き詰め、落下した際の衝撃を和らげるための敷設である。

操作卓は落下したが、その重量は570kgであった。

今回引き上げるFHM(燃料交換機)は20t(なぜ35tではないかは後述)である。

養生ラックの耐重量はどれくらいであろうか?

筆者は23日の東京電力の会見で質問したが、回答はまだ出ていない。

操作卓引き揚げの際の養生ラックは、750kgに耐えられる設計とのことである。(下記)

操作卓は570kgであったが、FHM(燃料交換機)は20tである。どのような養生ラックなのだろうか?

そのような重量のものに耐えられる養生ラックはあるのだろうか?

 

G1ゲートの危険性

使用済み燃料プールのプールゲートがずれれば、プール内の水は向う側、すなわち原子炉側に流れ落ちる構造になっている。

原子炉側には、この部分まで水位は無いため、使用済み燃料プールの水が流れ落ちるということであった。

このG1プールゲートはズレがあることが確認され、シール性などを評価されてきた。

調査の結果、恐らく大丈夫であろう、という評価は出たが、今回のFHM(燃料交換機)引き上げにあたって、

使用済み燃料プールの水の漏えいについても対策はとられている。

 

重量評価:35t→20tの謎

今まで、引き上げるべきFHM(燃料交換機)の重量は35t、と資料に記載されてきたが、

福島県にだけ配布された資料では、重量評価は20tとなっていた。

 

なぜ35tから20tになったのであろうか?

恐らく、35tとは、FHM(燃料交換機)の中で、トロリやホイスト滑車部も含めた重量なのではないだろうか。

ちなみにFHMマスト1.6t、操作卓570kgはFHM(燃料交換機)35tの中に含まれていない。

東京電力広報に取材すると、やはり、トロリなどを含めた重量が35tで、

今回撤去するFHM(燃料交換機)は20t相当とのことであった。

しかし、FHM(燃料交換機)のうち、今までにどれくらいの重量の何を撤去したのか、ということは、公表が無いので情報公開は随時して頂きたい。

 

「全燃料」566本→514本の謎

3号機使用済み燃料プールの燃料棒は、前述のとおり、566本と公表されてきた。

その内訳を東京電力に取材すると、使用済み燃料514本、新燃料52本、MOX燃料無し、ということであった。

平成22年度の3号使用済み燃料プールにはMOX新燃料は32本保存されていたが、

震災発生前に、3号機に装荷され、使用済み燃料プール内には無いということであった。

(そのMOX新燃料32本は、3号機原子炉内でメルトダウンしたものの一部となった。)

 

今回、FHM(燃料交換機)引き揚げの際の落下評価には「全燃料514本」としている。

なぜ、使用済み燃料のみを「全燃料」としているのか。新燃料52本は評価しないのか。

 東京電力広報に取材した。

「この資料の評価を説明する。

燃料ラックの中に燃料棒が保存されているため、万一FHMが落下しても、燃料棒の上部の破損くらいだろうと考えた。

なので、新燃料はまだ中性子が照射されていないため、上部の破損くらいでは、環境への影響は無いだろうとし、

この評価は使用済み燃料だけの評価を計算した」

ということであった。

 

これは敷地境界の空間線量率の評価のみである。

環境中に放出される放射能量のベクレル評価はしていないのか?

上部の破損以外の燃料破損は評価していないのか?

使用済み燃料プールの水がどの程度漏えいしたら、どのように温度が上昇するかなどの評価は無いのか?

様々な質問を会見でしているが、回答はまだ無い。

 

FHM(燃料交換機)引き揚げ予定日は、現場には通知されていた!!

この危険なFHM撤去をいつ行うのか。

筆者やファクタ宮嶋記者が、たびたび東京電力定例会見でたびたび質問していた。

しかし回答は「7月下旬」ということで、明確な日にちを発表することを避けていた。

 

この作業は、危険が伴うため、1F構内の全作業を規制するという。

それくらい、慎重さを伴う作業であるのに、なぜ、作業予定日を「7月下旬」のみとしているのか。

 

筆者が現場作業員に取材すると、「8月2日の日曜日に、FHM引き揚げ予定、と先週に通知があった。

1~4号機の下周り作業は全て作業中止になるため、事前通知が出た。」とのことであった。

 

東京電力は7月下旬、と説明してきたが、なぜ8月にずれこんだのか。

「それは1号機のカバー撤去と重なるからではないか。

月曜日に規制庁が現場確認をし、OKが出れば、明日には1号機のカバー撤去が始まるはず。

1号機のカバー撤去も重大な作業なので、日にちが重ならないようにしたのではないか」

とのことであった。

 

別の作業員に聞くと、3号機のFHM(燃料交換機)についてこのように話していた。

「とてもシビアな作業なのに、ほとんど報道されず、住民への説明もない。

不発弾処理の場合、近隣の住民は避難したり、鉄道や道路も規制される。

構内の作業規制だけでなく、付近の立ち入りも制限したほうがいいのではないか?

福島第一原発に近い国道6号線も、規制しなくていいのだろうか?

 

こう話す作業員もいた。

「FHM(燃料交換機)の引きあげ作業は大変だと思う。

遠隔で3か所つかんで引き上げるのだけど、どれだけ慎重に調査していても、

カメラでは見つからなかった亀裂や劣化、腐食があるかもしれない。

引き揚げの最中に、劣化部分が折れたり、外れたりしたら大変だ。

一発で引き上げるのは難しいのではないだろうか。」

 

 

 

 

20tのFHM(燃料交換機)の引き上げは、3点でつかみ、重心を確認しながら、回転しないよう、ゆっくり引き上げる。

その下部には566本の燃料がある。

引き揚げ時に、プールゲートに触れれば、プール内の水が漏えいする可能性もある。

福島第一原発の作業は規制されるのに、近隣への規制は無くていいのか、と危惧する作業員の意見は最もだと思う。

 

東京電力新橋本店での公表は27日現在で無し

このシビアな作業について、筆者が憤っていることがもう一点ある。

作業員が「ほとんど報道されていない」というが、会見での発表が無いのだ。

筆者は、報道配布資料だけでなく、様々な資料もチェックしている。

7月15日に、福島県の「廃炉に関する安全監視協議会」のみに、資料が公開されたときに驚いた。

なぜ、このような重要な資料を、記者会見で配布しないのか。

今まで、3号機の大型ガレキ撤去に関する資料は公表されていたが、もっとも重量があるFHMの資料はギリギリまで、

もしくは作業が終わってから報道に配布する予定だったのだろうか。

 

会見で資料配布しない、ということは、どういう意味を持つか。

現在の東京電力の記者会見では司会が「配布資料のみの質問を」などと規制する傾向がある。

そのたびに、筆者は「それは東京電力広報部としての決定事項か。今まではそうではなかったが」とたびたび抗議している。

何度も繰り返されるうち、記者の質問は配布資料のみになり、「資料配布されていないですが質問してもいいですか」と記者が許可をとるようになり。

そして、東電会見で配布される資料は、どんどん減り、ホームページ公開のみになったり、会見日と違う日にちで公表されたりするようになった。

 

作業員が「この重要な作業がほとんど報道されていない」というが、会見で資料が配布されていなければ、

筆者のように、特に興味を持って、様々な資料にあたらなければ気付かない問題となっているのだ。

実際、東電会見において、7月の東京電力本店の定例会見において、FHM(燃料交換機)について質問をしたのは、

筆者とファクタの宮嶋記者だけである。もちろん、大手記者も毎回出席しているが、このような状況なのである。

 

そして、もう一つ気になる問題がある。

2013年の特定秘密保護法案が通過するかどうか、強行採決されるかどうか、世間が騒がしかったときに発表されたのが

福島第一原発で最も線量が高い地点、1/2号排気筒の25SV/hの部分の発表であった。

安保関連法案が通過するかどうか、強行採決されるかどうか、世間が騒がしかったときに、福島県にだけひっそり発表されたのが

この3号機使用済み燃料プールのFHM(燃料交換機)引き揚げである。

(1号機カバー撤去も、もちろん重大な作業である!

2013年の3号機ガレキ撤去の際の近隣へのダストの巻き上げ、南相馬の玄米の放射性物質付着の件は解明されていないからである!)

 

現在進行形の戦場、福島第一原発

安保関連法案も、社会を歴史を変える重要なトピックであるが、現在進行形の戦場、福島第一原発のことも忘れてはならない。

作業員と東京で会うたびに筆者にこう言う。

「1Fは戦場みたいだけれど、東京は別の国のようだ」

帰るときは「では戦場に戻ります。」

先週7月23日に福島市であったIRIDの研究成果の発表シンポジウムでは、東京電力・廃炉カンパニー増田CDOはこう発言していた。

「やっと野戦病院のような状態を脱することはできました。」

 

先週7月21日に、筆者は福島市で裁判の取材をし、その後、原告や支援する方々の前で話す機会があった。

しかし、3号機のFHM(燃料交換機)引き揚げ作業に話すと、誰もこの件に関して情報を知らず、

「アンテナを貼ってるはずの福島の我々も知らないなんて!」と驚いておられた。

 

原発事故後、情報公開が後退していっている現状、様々な問題が発生しているが、

福島第一原発事故に、監視の目を向けることは、今こそ重要になってきている。

注目が無ければ、様々なシビアな問題が隠されていくだろう。

 

東京電力定例会見、福島会場にてぶら下がり取材をする筆者 撮影:おしどりケン

東京電力定例会見、福島会場にてぶら下がり取材をする筆者
撮影:おしどりケン