目次
①内部リークの資料は本物だった!!
②内部リーク資料は「職員が想像力たくましく書きすぎた」
③「規制庁職員の見解を公開すると国民が混乱するので不開示」
④国会の法案提出に無理やり合わせる規制庁に独立性とは
⑤事前協議は「自民党の参院選公約」をエネ庁が規制庁に説明していた!
3行まとめ
・規制庁が開示を拒んだ、エネ庁の説明資料が、エネ庁から開示された。そこには驚くべき資料、メモが入っていた。
・「運転期間をめぐる議論」として、自民党の2022参院選公約までエネ庁は資料化し、規制庁にレクしていた。
・「安全規制が緩んだように見えないことも大事」などというメモ書き資料も含まれていた。
エネ庁開示資料
エネ庁から、一部資料の開示決定通知が出た。
筆者はすぐに開示申出書を送り、面談資料が4件開示された。
下記が開示された4件の資料名である。
①令和4年7月29日資源エネルギー庁への提供資料
②令和4年8月23日長官等との事務方打ち合わせ資料
③令和4年8月29日環境省への説明資料
④令和4年9月13日長官等との事務方打ち合わせ資料
GX実行会議で、原発の運転期間延長を含めた検討を始めるよう首相が指示したのは8月24日である。
(ちなみに10月5日の原子力規制委員会で、経産省資源エネ庁から運転期間延長に関してヒアリング、
規制委員長が、事務方である規制庁に検討を指示したのはこの日である)
開示された資料のうち、①の7月29日のものが、筆者はもっとも重要と考える。
首相の指示も、規制委員長の指示も関係なく、エネ庁と規制庁で協議を始めたものだからである。
実際に、②から④の資料は、首相の指示後ということもあり、オープンの検討会、委員会で動き始め、すでに開示されている資料と同様のもの、酷似しているものがほとんどであった。
そしてこの①の資料に、筆者はもっとも衝撃を受けた。
(1)面談資料
令和4年7月28日原子力規制庁と資源エネルギー庁との面談において使用された資料のうち、資源エネルギー庁が作成したもの
1Pは原子炉等規制法の運転期間に関する規定であった。
規制庁が開示を拒んだ、エネ庁作成の面談資料は、なぜか規制庁所管の法律、原子炉等規制法から始まる。
エネ庁が、規制庁所管の法律を変えるというのが明確な目的のレクである。
2Pは、「運転期間をめぐるこれまでの議論」として、更田・前委員長の答弁である。
3Pは「運転期間をめぐるこれまでの議論」第6次エネルギー基本計画における記載である。
さて、問題はここからである。
4Pの「運転期間をめぐるこれまでの議論」には「自民党提言」とある。
GX会議で指示される1ヶ月前に、何を根拠に運転期間延長の談合をしていたかというと、
自民党の意向に沿っていたのだ。
ここから、自民党関連の資料が続く。
(赤線は筆者)
5Pも運転期間をめぐるこれまでの議論は、自民党提言である。
驚くのは6Pだ。「運転期間をめぐるこれまでの議論」は、
なんと、(自民党 2022年参議院選公約)とある。
エネ庁は、自民党の選挙公約を、資料にし、規制庁にレクチャーしていたのだ。
これは「議論」でも何でもない。単なる自民党の選挙公約である。
自民党の選挙公約を実現するために、資源エネ庁は動いているのか!?
7Pは、原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」だ。
「原子力委員会」は「原子力規制委員会」と異なる組織である。
原子力委員会は内閣府の下にあり、国の原子力行政を進める委員会である。
8Pは(参考)として、骨太・新しい資本主義実行計画がつけられている。
選挙で選ばれた政治家の方針を資料にするというのは理解できる。
しかし、この閣議決定された「骨太の方針」と、前3つの自民党の提言、選挙公約は、非常に異なる。
自民党の選挙公約、提言のほうが踏み込んだ内容で、高経年化した原発の運転延長に言及してるのに対し、
閣議決定された「骨太の方針」のほうは、「原子力など…脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」と記されているのみで、運転延長に関しての記載はない。
繰り返すが、経産省資源エネ庁が作成し、規制庁に説明した「運転期間をめぐるこれまでの議論」の中身は、
自民党の提言や選挙公約が中身が半分を占めていたのだ。
9Pは、法改正のイメージ図が書かれていた。
ここですでに、炉規法から、「運転期間に係る規定が引っ越し」と書かれている。
この、昨年7月の資料のとおり、原子炉等規制法から、運転期間上限にかかる規定が削除された法案が、今国会に提出された。
自民党の選挙公約に沿った資料をエネ庁が作成し、規制庁にレクして、法改正が行われているのだ。
ここに、原子力規制庁の独立性は担保されているだろうか?
運転延長に関して、議論は十分だっただろうか?
どこを見て、古い原発の運転延長が決定されたのだろうか?
どこを見て→自民党の選挙公約、意向が反映されたことは、この開示された資料でよく分かった。
10Pめ、最後の一枚も驚きの資料である。
「規制委が主請議・提案者とならない法構成が必要」とある。
つまり、原発事故発災後に改正された、運転上限を炉規法から削除するにあたって、
規制委員会が「言い出しっぺ」とならない法構成が必要、という意味だ。
そういう形での法構成が、今回の「束ね法案」である。
複数の法体系の改正を一度におこなう束ね法案は、国会審議の形骸化をまねく。
各省庁にまたがった複数の法を一度に改正するということは、通常、それぞれ分かれている委員会での審議が機能しにくいのだ。
そして、最後の箇条書きも衝撃であった。
「一方、安全規制が緩んだことように見えないことも大事」
規制委が、高経年化した原発の運転期間の上限を、炉規法から削除する、という、
原発事故発災の反省を経て、発足した原子力規制委員会が、
原発事故発災後に改正された原発の運転期間の上限を手放すという、
どう考えても安全規制の緩みに関して、「安全規制が緩んだことに見えないことも大事」と懸念はしているのだ。
しかし、なんという酷いことだろうか。
原子力推進側のエネ庁が、原子力規制側の規制庁に、
自民党の選挙公約などを示しながら、高経年化原発の運転期間上限の削除をレクチャーし、
「一方、安全規制が緩んだように見えないことも大事」と、伝えているのだ。
十分に、自分たちが現在、協議していることが、どう見えるのか、自覚している内容と思える!!
以上が、規制庁が開示を拒んだ、エネ庁の説明資料の一部である。
今後も、他の開示された資料(環境省資料など)も公開していく。
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