3行まとめ
・27日の会見にて、15日付けの資料が配布され、FHM(燃料交換機)引き揚げについて説明があった。
・引き上げ予定日は「調整中」とのことだが、8月2日(日)を予定しているとのこと。
・敷地内の作業を全て中断して備える、大きな危険が伴う作業であるにも関わらず、会見での説明はほとんど無い。
関連記事:3号機SFPの燃料交換機の引き上げは不発弾処理と同じ!?
12日遅れで、東電本店会見で資料配布
筆者が、前回の記事で「東京電力新橋本店での公表は27日現在で無し」と書いた数時間後の会見で
7月15日付けの資料が、27日に配布された。12日遅れである。
「注目が高くなってきたので説明する」とのことだが、会見にて質問し続け、説明を求め続けてきたのはFACTA宮嶋記者と筆者である。
前回記事でも説明したが、会見で資料を配布しなければ、質問は無く、説明も無い。
残念ながら、東京電力の情報公開は後退しており、信頼を回復するためのリスクコミュニケーションはできていない。
原発事故の情報は大手メディア優先に
東京電力の本店での会見ではなく、原子力規制庁の記者室で資料を配布した、と東電広報は説明するが、
その記者室でのブリーフィング、資料配布は辞めてほしい、と筆者や東京新聞記者などは何年も要望している。
月曜、木曜の定例会見ではなく、規制庁の記者室で資料配布するということの問題は、大手メディアを優先するということだ。
規制庁記者室(あくまでも『記者クラブ』ではないが、東電広報は時々言い間違えるのでそういう認識なのだろう)に、記者が常駐するにはそれなりの大手メディアでなければ人員を割くことができない。
今まで、東京電力の本店会見で発表してきていた情報を、本店会見ではなく、規制庁記者室にて不定期に資料配布したりブリーフィングしたりする。
そうすることで、記者室に記者を常駐させることができないメディアは、実質的に排除される。
宮嶋氏のFACTAや筆者のL.C.M.Pressもそうだ。
この情報公開の体制を変えてほしい、と何年も要望しており、27日も筆者と東京新聞記者が要望したが
東京電力広報、白井氏は「回答は変わらない。(現状を変えない)」と検討もしないという回答だった。
敷地内の全作業を規制して行うのは初めて
3号機のFHM(燃料交換機)引き揚げは、福島第一原発敷地内の他の全作業を中断して行う。
作業員に確認したところ、「このような作業規制がかかるのは初めて。
4号機の使用済み燃料プールから燃料棒取り出しを始めたときも特に規制は無かった。」とのことであった。
20tという巨大なFHM(燃料交換機)を、3点で掴んで回転しないよう、ゆっくり引き上げる。
下には燃料棒が566本ある。
本来、水中で使用するものではない燃料交換機が、2011年3月以降、水中に浸かりっぱなしであり、
かつ、超高線量という過酷な状況の中、腐食・劣化も考えられる。
東京電力広報、白井氏は、筆者の質問に会見の中でこう答えた。
「万が一のことを考えると、周辺の作業は取りやめる必要がある。
さらに今回、燃料プールの中での作業になるということで、発電所全体の作業を、この作業している時間に限って、作業を取りやめて実施しようと計画している。」
近隣の規制は必要ないのか、国道6号線の規制の必要はないのか、と筆者はさらに質問した。
2014年9月15日に開通した国道6号線は、福島第一原発の敷地境界から、最も近いところで1kmと離れていない。
この部分の質疑を抜粋する。( @jaikoman 氏の書き起こしより。氏のサイトもぜひ一読して頂きたい)
ーーでは、開通している国道6号線は敷地境界から距離は1kmをきっているが、これは6号線も万が一の場合は規制の可能性があると言うことか?
東電白井:そういった敷地の外で規制する、しないの話は、我々の方で判断出来る内容ではない。担当箇所に聞けばいいとおもうが。
ーーでは、その担当箇所に引き上げの日にちは伝えているのか?
東電白井:引き上げの日については、いろんな所と調整しているところ。なので、日にちが決まった段階で知らせたい。
ーー急に日にちを告知すると、国道6号線の規制の場合は混乱されると思うが、まだ告知はしていないと言うことだな?
東電白井:そうだ。出来るだけ早く調整を終わらせて、公表はしたいと思っている。
ーーわかった。今まで7月下旬に引き上げると言うことだったが、現場に取材をした結果、8月2日の日曜日に1~4号の規制が掛かっており、燃料交換機の引き上げ予定日だと言うことが出されていた。東電白井:ですから、何度もいうように、まだ現在は調整中だ。正式に決まったら公表はさせてもらう。
やはり8月2日(日)にFHM(燃料交換機)引き揚げ予定
会見終了後のぶら下がりにて、東京電力の別の広報から、
「FHM(燃料交換機)引き揚げは、おっしゃるとおり8月2日の日曜を予定しています。
急に伝えて、急に作業中止をすることは難しいので、事前に伝えました。
しかし、まだ決定ではなく、調整中ですので、発表には至っておりません」
という説明を受けた。
しかし、近隣の規制も、急に伝えて、急に規制することは難しいだろう。
いつの段階で、発表をする予定なのだろうか。
FHM落下時は、敷地境界で10μSVの被ばく
FHM(燃料交換機)落下した場合、敷地境界の被ばく線量は、10μSV、空間線量率は約0.1μSV/h上昇すると 東京電力は評価している。
これは、過去記事で取材したが、全燃料566本のうち、使用済み燃料514本の上部が破損したという場合の評価である。
これは、放射性物質がどの程度放出されるという評価なのか?
回答は、「希ガスが、3×10^13Bq(30兆ベクレル)放出した場合の被ばく評価」とのことであった。
燃料の上部破損だけの評価でいいのか、放出される放射性物質の評価は希ガスだけでいいのか、
などなどまだまだ疑問は残るが、少なくとも、万一の場合は敷地境界での線量が上昇されることが予想され、
FHM(燃料交換機)引き揚げの際は、敷地内の作業は一切とりやめるのならば、
やはり、近隣への通知、規制は早めに行って頂きたい。
養生ラックの耐荷重は回答無し
筆者は、FHM(燃料交換機)撤去の際に敷設した養生ラックの耐荷重について、以前から質問しているが、回答が無い。
操作卓を落下させた際の知見をいかし、養生ラックを追加敷設した、と説明があった。
操作卓が落下したときの資料には、養生ラックの耐荷重は750kgとある。
しかし、今回、追加された養生ラックは、形状が違うようなので、では今回のものは耐荷重はどれくらいか、と質問をしている。
が、回答が返ってこない。
27日の東電定例会見では、白井氏が
「この養生ラックは、FHMに何か一緒にくっついてきた物が落下した、或いはFHM鉄骨とか何か一緒にくっついていて、それが誤って落ちた、とかそう云った時に落下の衝撃を吸収するための物になります。」
と説明されていたため、改めて、耐荷重を問うと、
「20トン(FHM)の引き上げに関係なく、興味として知りたい、という理解で宜しいですか」
「20トン(FHM)とは関係ないんですよと。新しい物を作ったんだから教えろと、ただそれだけ。という理解でよろしいですか」
と、まともに回答をせず、恫喝するような口調で驚いた。
筆者は、FHM(燃料交換機)と養生ラックは関係ないわけではなく、白井氏自身が説明の中で、養生ラックはFHM引き上げの際の落下物のために敷設した、とおっしゃっていたのだから、耐荷重は回答してほしい、と要望した。
シビアな作業にも関わらず、ほとんど説明無し
3号機使用済み燃料プールからの20tの燃料交換機の引き上げ作業は、敷地内の作業を中断して行うシビアなものである。
2011年発災以降、敷地内の全ての作業を中断して、1つの作業に集中するのは初めてのことである。
20tのFHM(燃料交換機)を引き上げる下には、燃料棒が566本ある。
水圧で押さえられているだけのプールゲートに触れれば、使用済み燃料プール内の水の漏えいの危険性もある。
使用済み燃料プールから操作卓を引き上げた際は、一度、落下させている。
このようなシビアな作業に対して、本店会見での説明を自ら行わず、質問し続け、説明を求め続けた結果、12日遅れの資料を配布した。
しかし、質問しても回答がまともに返ってこない。
これは本当に酷い状況ではないだろうか。
この養生ラックの耐荷重の質疑の部分は、あまりにも酷かったため、動画を抜き出し書き起こした。
【起こし】FHM引き上げについて、まともに説明しない東京電力
現状がどうなっているか、ぜひ一度ご確認頂きたい。