3行まとめ
・海側遮水壁の閉じられない切れ目からは毎日、汚染水が海へ流出。
・「閉じられない切れ目」を広河隆一氏が空撮!
・港湾内の海水はどの程度入れ替わるかの試算。2日後には80%、5日後には99%入れ替わる。
海側遮水壁の閉じられない切れ目から毎日放射性物質が海へ
以前の記事、「海へ流出する放射性物質は一日に220億ベクレル以上」で、
東京電力が2014年8月に公表したグラフを表示した。
このグラフの中の「閉合後」という言葉に注目してほしい。
これは汚染水対策のうち、「海側遮水壁を閉合したら、海への放射性物質の流出が低減する」ということを説明するグラフである。
海側遮水壁を閉合するには、陸側遮水壁、海水配管トレンチ、サブドレン汲み上げなど、陸側の地下水対策を全て完成せねばならない。
陸側の地下水低減対策をする前に、海側遮水壁を閉じてしまえば、地下水の逃げ道は無くなる。
海に流れない地下水は、閉塞されたエリアにたまり、地盤がゆるむ。
原子炉建屋、タービン建屋、様々な建屋に影響は出たり、様々な作業に悪影響が出ることが予想される。
実際に、陸側遮水壁が完成するにつれて、護岸エリアの水位が上がり、地下水の汚染エリアが広がったのである。
なので、陸側対策が完成してから、海側遮水壁を閉じることになっている。
現在も、全長780mのうち10mは閉合できずに開けたままなのである。
そこが地下水の逃げ道、というより福島第一原発から出る汚染水の流出口となっている。
その閉合できない部分から流出している放射性物質の量を、東京電力が出したものが前述のグラフだ。
2014年8月当時で
Sr90 | 50億Bq/ |
Cs137 | 20億Bq/ |
H3 | 150億Bq/ |
2015.02.27訂正
この量を、閉合できない部分から、毎日、海に放出している。
評価していないが、Cs134もある程度海に流出しているだろう。
他の地点の地下水の汚染レベルと比較して、Cs134は数億Bq/L程度は毎日放出していることが予想できる。
そして、2015年2月現在は、昨年8月の評価より、流出量が増えていることについては、前回の記事を参照して頂きたい。
閉じられない海側遮水壁の切れ目を広河隆一氏が空撮
2015年1月、広河隆一氏が福島第一原発の上空から、敷地内の写真を撮影した。
そしてその写真を用いて、おしどりマコ・ケンで汚染水に関する記事を書いた。DAYS JAPAN
2014年の汚染水漏えい記録全てなどをマップ上に落としたので、DAYS JAPAN3月号をぜひご覧いただきたい。
そして、広河隆一氏に空撮写真をこの記事の使用許可を頂いたので掲載する。
海側から福島第一原発を上空から撮影した写真である。
この、閉じられない切れ目を拡大したものが下記である。
切れ目周辺に「シルトフェンス」が張り巡らされているが、これはシルト(沈泥)を低減させるためのもので、
放射性物質を低減するわけではない。
シルトに付着した放射性物質は除去できるだろうが、東京電力の今までの測定でも出ているように、
濁度4ppm以下のサンプリング水でも、高濃度の放射性物質を含む地下水も存在しているので、
そのような汚染水の放射性物質の除去は、シルトフェンスでは無理だろう。
24日に継続して汚染水が港湾外に流出していたことが判明したK排水路の排水口も写っていたため、拡大する。
このように、福島第一原発の汚染水は、海に日々流れ出ているのである。
港湾の海水はどの程度入れ替わるか
筆者の過去記事、汚染水は港湾で希釈してから沿岸へでも説明したように、港湾内の海水は日々入れ替わっている。
この過去の記事で詳細に書いているが、日々の潮の満ち引きで、港湾内の海水は50%入れ替わり、
5/6号機の取水放水ラインで港湾内の海水を7.3%外へ汲み上げている。
(過去記事より、計算式)
7,000(m3/h)×24(h)=168,000(m3)
→1日に16万8千トンの海水を5,6号機ポンプが港湾内から外に汲み上げる。
168,000(m3)÷2,300,000(m3)≒0.073=7.3%
→それは、港湾内の海水量の7.3%にあたる。
単純に計算することはできないと思うが、試算してみたい。
0.50+0.73=0.573
→毎日、57.4%の水海水が入れ替わっているとする。
1-0.573=0.427
→42.7%の海水が港湾内に入れ替わらず残る。
基準の日の海水を1とすると、1日後に入れ替わらず残っている海水は42.7%。
0.427×0.427=0.1823
→2日後に入れ替わらず残っている海水は18.2%。
0.1823×0.427=0.077
→3日後に入れ替わらず残っている海水は7.7%。
0.077×o.427=0.0332
→4日後に入れ替わらず残っている海水は3.3%。
0.0332×0.427=0.0141
→5日後に入れ替わらず残っている海水は1.4%。
0.0141×0.427=0.0060
→6日後に入れ替わらず残っている海水は0.6%
0.0060×0.427=0.0025
→7日後に入れ替わらず残っている海水は0.25%
港湾内の海水は、翌日に半分は入れ替わり、翌々日は80%は入れ替わる。
5日もたてば、港湾内の海水は99%入れ替わることがわかる。
「港湾外での測定値は、告示濃度限度以下で問題無い」との説明もあるが、
それは、告示濃度限度の意味を理解していないだろう。
「環境に放出してもいい排水の告示濃度の限度」なので、
環境中で希釈された後の濃度に対する限度ではない。
また、希釈された海水の測定値だけではなく、様々な面から環境への影響を考えなければいけない。
今年の1月に発表された、港湾内の魚の最高値は、セシウム合計で22万3千Bq/kgである。
福島第一原発の汚染水問題は2011年から継続しているだけでなく、
様々な施設の劣化なども含め、状況が悪くなっていることを、この機会に理解して頂きたい。