3行まとめ
↓↓この記事は続報のため、前回の記事で詳細を確認してほしい↓↓
・17日に漏えいした汚染水のトリチウム濃度は88万Bq/L。
・漏えい原因は、施工図面を誤認し、間違った手順書を作り、そのうえ作業前のライン確認を怠ったこと。
・福島中央テレビではトリチウムについて言及は無いが、日本テレビではトリチウムについてだけ言及があった。
汚染水漏えいの原因
東京電力報道配布資料:多核種除去設備処理水のJ6移送ラインからの漏えいについて
(報道宛てメールの続報3、続報4については、記事末尾にある)
東京電力によると、漏えいに至る原因は2つあった。
①施工図面を誤認し、間違った手順書を作成。
➁現場で、作業前の実際の配管のライン確認をしていない。
➁について、東京電力は今後の対策として「移送前にライン構成の確認を実施」としている。
①については、「誤認した原因について調査を継続し、必要に応じて対策を検討」となっており、
まだ原因もわからず、対策もとられていない。
通常、高濃度汚染水の配管施工をする場合、いきなり高濃度汚染水を流すのではなく、
水など環境中に影響のない液体や気体などで、漏えいが無いことを確認する場合が多い。
しかし、現在の福島第一原発では、そのような確認を行わず、いきなり高濃度汚染水を流すため、
配管ミスなどの漏えいが発生している。
例:2013年10月
配管が誤って接続されていることに気付かないままポンプを起動し、溢水した例
施工図面を誤認した原因はわかっていない。
これは根本的な欠陥である。
施工図面を正しく読めなかったのか。
誤った施工図面、わかりにくい施工図面だったのか。
筆者が福島第一原発の作業員に取材したところ、年間線量限度に達する経験者の作業員が増加しているため、
初心者の作業員が増え、そして、初心者を育てる余裕もないため、作業員のレベルの低下が進んでいる、と聞いた。
また、福島第一原発の事故後の施工会社は、様々な会社が入っているため、今までと違い、
図面に全ての配管を記載していなかったり、図面の書き方が違っていたり、様々な弊害を生んでいるという。
賛否両論あるが、今まではメーカー、東芝と日立などがおもに図面から施工を引き受けていたのだが、
それが高額であるということ、独占せず自由競争が必要なこと、などから様々な会社が入ることになった。
その結果、図面の書き方が杜撰な会社があったり、図面どおりに施工しない会社があったりなど、トラブルがあるという。
施工図面を誤認した原因はきちんと調査し、今後、対策をとってほしい。
(しかし、それが慢性の人員不足によるものならば、抜本的対策は難しい、と筆者は思う。)
漏えいした汚染水の濃度
ALPS処理水 | 漏えい箇所周辺の漏えい水 | 配管トレンチ内のたまり水 | |
Cs-134 | ND | 4.3Bq/L | ND~0.48Bq/L |
Cs-137 | 0.45Bq/L | 14Bq/L | 1.2~1.7Bq/L |
全β | 110Bq/L | 47Bq/L | 2.2~66Bq/L |
H-3(トリチウム) | 880,000Bq/L | 500,000Bq/L | 330~380,000Bq/L |
ルテニウムやアンチモンなどの核種については、前記事を参照して頂きたい。
前記事でも説明したとおり、ALPS処理水にはトリチウムが最も多く含まれる。
そしてそれは排水の告示濃度限度(トリチウムは60,000Bq/L)をはるかに超えた、88万Bq/Lであった。
漏えいしたのはALPSの処理水であるが、環境中に出ると、
現在の福島第一原発では事故時のフォールアウトにより、セシウムが大量に存在しているため、
Cs134,Cs137が漏えい水に検出される。しかし、たまり水などで希釈もされる。
そのため、漏えいした処理水と、漏えい水などの値が上下するのである。
(トリチウムは希釈され、セシウム値は上昇するなど)
汚染水漏えいの福島県内での報道について
前回の記事でも言及したが、日テレ24で中継していた福島中央テレビでは、
漏えいした汚染水のニュースでトリチウムについて全く言及していなかった。
日テレ24のサイトでリンクがあったため、参考として添付する。
日テレ24で中継された福島中央テレビのニュース http://www.news24.jp/nnn/news8657635.html
上記は、系列である福島中央テレビのニュースを日テレ24で中継した際のものである。筆者はこの放映を見たのだ。
ふと思いつき、日テレ24そのもので、このニュースをどう扱っているか調べた。下記のリンクである。
日テレ24 http://www.news24.jp/articles/2014/12/18/07265526.html
筆者はとても驚いた。
日テレ24のサイトでは、トリチウムについて言及していた。抜粋する。
漏れた水には放射性トリチウムが含まれていて、周辺の土壌に染みこんだとみられている
しかし、福島中央テレビではこうだったのだ。抜粋する。
漏れたのは汚染水を浄化した後の水で、1リットルあたり0.4ベクレルの放射性セシウムが含まれていた
つまり、原発事故を起こした福島第一原発がある地方のTV局だけ、
汚染水に含まれている高濃度トリチウムの情報が出なかったのである。
この汚染水漏えいは原子力規制庁が法令報告事象(核燃料物質等が管理区域内で漏えいしたとき)に該当するとした事故である。
そして、排水の告示濃度限度を大きく超えているのはトリチウムである。
それに言及せず、はるかに低濃度のセシウムにしか説明しないのは、
福島第一原発事故が発生した地方に存在する報道としての立場を問いたい。
【東京電力からのご連絡】福島第一原子力発電所Jタンクエリアからの水漏れについて
──────────────────────────────────── 東京電力からのご連絡 ──────────────────────────────────── 報道関係各位 本メールは、事前に「深夜・早朝における連絡先」の登録のお申し込みをいた だいた方にお知らせしています。 ○多核種除去設備処理水をJ6タンクエリアに移送時に発生した漏えいに関する 続報です。 ○漏えいが発生した当日(12月17日)に採取した水の分析結果は以下の通りです。 【多核種除去設備処理水】 ・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:2.3×10^-1 Bq/L) ・セシウム137:4.5×10^-1 Bq/L ・全ベータ:1.1×10^2 Bq/L ・トリチウム:8.8×10^5 Bq/L 【漏えい箇所周辺の漏えい水】 ・セシウム134:4.3×10^0 Bq/L ・セシウム137:1.4×10^1 Bq/L ・全ベータ:4.7×10^1 Bq/L ・トリチウム:5.0×10^5 Bq/L 【配管トレンチ内の溜まり水】 ・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.5×10^-1 Bq/L)~4.8×10^-1 Bq/L ・セシウム137:1.2×10^0 Bq/L ~ 1.7×10^0 Bq/L ・全ベータ:2.2×10^0 Bq/L ~ 6.6×10^1 Bq/L ・トリチウム:3.3×10^2 ~ 3.8×10^5 Bq/L ○本メールには返信できませんのでご了承ください。 <以下、お知らせ済み> ----------------------------------------------------------------------- ○当該処理水をタンクに移送する担当箇所は、J6タンクエリアに移送するため の手順書を作成するにあたり、タンク工事実施箇所と施工図面を用いて確認を 行った結果を反映しておりましたが、施工図面を確認した際に配管の接続状況 について誤認してしまい、結果として間違った手順書が作成されました。 ○この手順書を元に弁の開閉操作を実施した結果、施工中の配管へ当該処理水が 流入し、漏えいに至りました。また、現場において、実際の配管のライン確認 は実施しておりませんでした。 ○今後は、新設ラインの弁操作を実施するにあたっては、移送前にライン構成の 確認を確実に実施することと致します。 ○手順書作成の際に移送ラインを誤認した原因については、調査を継続し、必要 に応じて対策を検討してまいります。 ○なお、漏えい水が染みこんだ土砂については、12月18日午後1時30分に回収が 完了しました。回収範囲は、昨日実施した範囲を含め、約2.4m×15mであり、 回収量は約5.7m3でした。 <以下、お知らせ済み> ----------------------------------------------------------------------- ○配管トレンチ内の溜まり水(雨水も含む)については、12月17日午後7時35分 に回収を完了しました。回収量は約9m3です。 ○漏えい水が染みこんだ土砂については、12月17日午後5時30分までに約20m× 0.5mの範囲で回収しております。 <参考> 福島第一原子力発電所Jタンクエリアからの水漏れについて(現場写真) http://photo.tepco.co.jp/date/2014/201412-j/141217-01j.html Jタンクエリアからの水漏れ箇所概略図 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_141217_10-j.pdf <以下、お知らせ済み> ----------------------------------------------------------------------- ○現場確認の結果、漏えいした水は近くの土壌に染みこんでいること、また配管 トレンチに溜まっており、その先も土嚢により流出が止まっていることを確認 したことから、海への流出はないと判断しました。 ○漏えい量は、移送量と移送時間から約6トンと推定しております。 ○至近(12月15日)における当該処理水の分析結果は、以下の通りです。 ・多核種除去設備A系処理水:8.9×10^1 Bq/L(全ベータ) ・多核種除去設備C系処理水:1.2×10^2 Bq/L(全ベータ) ○今後、漏えいした土壌の回収および配管トレンチに溜まった水の回収を行いま す。 ○また、本件については、12月17日午後4時25分に核原料物質、核燃料物質及び 原子炉の規制に関する法令第62条の3に基づき制定された、東京電力株式会社 福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規 則第18条第12号「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことに より、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき。」 に該当すると判断いたしました。 <以下、お知らせ済み> ----------------------------------------------------------------------- ○12月17日、多核種除去設備処理水をJ6タンクエリアに移送しておりましたが、 J5タンクエリアとJ6タンクエリアの配管が一部接続されておらず、同日午 後3時00分頃、当該処理水が漏えいしました。 ○当該処理水は堰外に漏えいしましたが、当該接続配管の弁を閉じて、漏えいは 停止しました。 ○また、漏えい箇所近傍には排水溝はないため、海への漏えいはないことを確認 しました。 ○現在、漏えい状況等を調査しております。 ○なお、モニタリングポスト指示値の有意な変動は確認されておりません。 以 上