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被曝線量を把握せず「体調不良は仕事と関係なし」と切り捨てる東電

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9月6日、福島第一原発から作業員の60代男性が、ドクターヘリでいわき市立総合磐城共立病院に搬送された。

3行まとめ

*8日、東京電力は『仕事と関係ないと当社が判断し、これ以上の情報は出さない』と発表。
*その後、筆者が取材し、当該作業員の積算被ばく線量が80mSV近いことを把握しているか、と聞くと「把握していない」と回答。
*11日、東京電力は『仕事と関係ない』ではなく、『因果関係は判断できていない』と、発表を撤回。

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8日の東京電力の説明

3号機付近の凍土壁の資材置き場にて、寸法取りの作業をしていた男性が、作業後の着替えの際にのどの痛みの体調不良を訴えた。

同日午前10時50分に、入帯域管理棟救急医療室(ER)に入室し、エコーなど医師による診察の結果、救急搬送の必要があると、午前11時18分にドクターヘリを要請、11時52分に福島第一原発を出発、午後0時15分にドクターヘリにて、いわき市立総合磐城共立病院へ向かった。
医師の診察の結果、1~2週間の入院加療を要することとなった。
8日の東京電力会見時に、筆者は、病名や、電離検診などさまざま質問をしたが

「仕事とは関係ないと東京電力で判断したので、病名などその他の情報は、プライバシーの問題もあり、これ以上出さない」とのことであった。

その「東京電力の判断」に医療関係者、産業医は加わっているのか、男性の福島第一原発の作業経験が6か月ということなら、入域前、と6か月後に電離放射線障害防止規則による電離検診を受けているはずなので、その結果はどうか、など様々な質問しても、「これ以上出さない」ということであった。

福島第一原発からドクターヘリで搬送した作業員の方の情報を、なぜ「東京電力が、仕事と関係ないと判断したので、これ以上情報は出さない」とするのか、8日の記者会見では、記者からの追及が会見後も続いた。

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当該作業員の積算被ばく線量は80mSVほど

筆者が独自で取材をした結果、この男性は、動脈瘤ということであった。もともと、心筋梗塞の経歴があり、高血圧でもあったそうだ。
カテーテル手術をされ、1週間で退院されたとのことである。

問題はここからである。

筆者は放管手帳を確認させて頂いたわけではないのだが、積算被ばく線量が80ミリシーベルトほどあるというのだ。

そして、今年は4月から福島第一原発の作業に従事したのだが、2012年と2013年も福島第一原発の作業や、その他、除染作業に従事されているのだ。東京電力は「寸法取りなどの作業なので、体調不良は仕事と関係ないと判断した」と説明するが、別の作業員によると「(寸法取りをしていた)3号機の法面付近は線量が高い」ということであった。

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東京電力が前回の発表を撤回

16日の東京電力会見で、筆者はもう一度疑問をぶつける。
しかし、東京電力は仕事と関係ないのでこれ以上情報は出さない、と繰り返す。
積算被ばく線量や、直近の電離検診などの情報も出さない、と言う。
では、東京電力として、仕事と関係ない、と判断した根拠は何か、積算被ばく線量を把握しているのか、と質問すると、驚くべき回答が返ってきた。
ドクターヘリで搬送された作業員男性の積算被ばく線量は把握していないというのだ。
2012年や2013年も福島第一原発で作業していたことは把握しているか、と聞くと、それも把握はしていないという。

そのように、男性の作業状況や、積算被ばく線量を把握していない状態で「東京電力は仕事と関係ないと判断した」というのはおかしくないか、とたたみかけると、
「元受けから説明を受けていない」という。

放射線管理手帳などで放射線業務にたずさわっていた期間や積算被ばく線量はすぐに把握できるが、それを怠ったのか、
元受けからの説明のみということだが、入帯域管理棟救急医療室を運営しているのは東京電力であり、看護師などは東京電力の社員である。
少なくとも、積算被ばく線量などの情報を把握しないのはおかしくないだろうか、と聞くと、東京電力は沈黙した。
そして、東京電力は11日の会見において、「仕事と関係ない」という発言を撤回し、「直近の仕事とは関係ない」と言い換え「因果関係はわからない」と撤回した。

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8月8日に死亡した作業員男性の病名も発表せず

8月8日に作業員の60代男性が倒れ、心静止状態で緊急搬送され、いわき市立総合磐城協立病院で死亡が確認された。

この件も、「作業開始前の打ち合わせに向かうところで、作業時間内ではないから」という理由で詳細な情報、病名も確認しない、とのことで詳細は発表されなかった。
しかし、筆者が独自で取材すると、病名は大動脈解離ということであった。
この9月6日の男性と同じ、循環器系の疾患である。
筆者は独自の取材で、作業員の方々の循環器系疾患が多いこと、心筋梗塞など循環器系の疾患で突然亡くなられる方も多々おられること(福島第一原発医療室の元看護師への取材)などを把握している。
チェルノブイリ原発事故において、リグビダートルとよばれる事故処理作業者の方々に循環器系の疾患が増えたという調査も多々ある。

日本でも、福島第一原発事故以前から、被ばくと循環器系疾患について、議論が行われている。

厚生労働省 循環器系疾患と放射線被ばくに関する医学的知見について
電力中央研究所報告 低線量放射線による心血管疾患誘発
放射線影響研究所 がん以外の疾患による死亡
http://www.rerf.or.jp/radefx/late/noncance.html

放影研の調査にはこうある。

「被爆者(特に若年被爆者)における心臓血管疾患の発生率が増加していることはほぼ明瞭である」
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「明日は我が身」と言いながらの作業員の方々

もちろん、作業員の方々の私病もある。

しかし、現在の福島第一原発での作業は、被ばくだけではなく、様々な過酷な状況にある。
被曝の問題だけではなく、適切な労働環境かどうかも重要である。
最前線で作業されている作業員の方々がおられてこそ、その方々が守られてこその廃炉作業である。

同じ敷地内の作業で、毎年何人も死亡されるような作業場があるだろうか。

発表されるのは作業時間内・敷地内に倒れた方だけで、作業時間外・敷地外で亡くなられた方は発表されない。
寮やアパートで夜に亡くなっていた方々もおられ、東京電力として報告を受けるが、発表はされない、と話したのは元東京電力社員の福島第一原発の看護師である。

「体調不良は、仕事と関係ないと東京電力が判断したので、情報は出さない」

「元受けからの情報でそれ以上調べない」
これで、本当に作業員の方々が守られるだろうか。

福島第一原発の作業員の方々がきちんと守られるためにも、監視の目、抗議の声は必要である。

そして、東京電力はきちんと情報を把握し、公表するべきである。

「最近の東京電力は情報の出し方がおかしい」これは筆者が取材した作業員の方々の声である。


作業員の方々の体調不良や突然死を「明日は我が身」と言いながら、最前線で働く方々の状況を我々は知らねばならない。

(無断の全文転載はお断りいたします)

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