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原発作業員の計画集団線量、市民団体へは実際の3分の1の数字を説明

Byoshidori-makoken

12月 13, 2024
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2024年9月、2号機燃料デブリ「試験的」取り出しが成功した、と大きく報じられた。

が、数々の問題点、欺瞞がある。それを一つずつ取り上げていく。

2号機燃料デブリ「試験的」取り出し 東京電力の欺瞞 その①
作業員の集団線量、市民団体へは会見の3分の1の数字を説明

3行まとめ

・この作業の集団計画線量は、汚染カメラの人力交換という予定外の作業が加わったため、
10月3日に610人・mSvから960人・mSvに上方修正された。

・しかし、10月24日の、市民団体「共の会」への東電交渉では「360人・mSv」と文書回答していた。

・なぜ説明もなく3分の1の数字しか回答しないのか、筆者が問うと
個別の市民団体との交渉の場での回答への説明はしない」

集団線量とは

筆者は、この作業に携わる作業員の方々の日々の実際の被ばく線量を、会見のたびに質問してきた。

そして計画集団線量もあらかじめ質問していた。

計画線量とは、作業に入る前に、どの程度の被ばく線量の作業になるかの計画である。

集団線量は「人・mSv」などの単位であらわす。

集団線量とは、一人一人が受けた放射線量を、その集団全体について合計したものである。

(例えば、5人が1mSv被ばくすれば、5人×1mSv=5人・mSv という集団線量になる。

同じく10人が0.5mSv被ばくしても、10人×0.5mSv=5人・mSv という集団線量である。

また、2人が、3mSvと2mSv被ばくしても、5人・mSv という集団線量になる。)

ALARA会議とは

福島第一原発では、高線量作業が多い。
少しでも作業員の被ばくを低減するため、高線量が予想される作業については、事前にALARA会議にかけられる。

ALARA(アララ、と読む)とは、「as low as reasonably achievable」の頭文字で
ICRP(国際放射線防護委員会)が1977年勧告で出した放射線防護の考え方である。

「すべての被ばくは社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべき」

「合理的に達成可能な限り低く」が 「as low as reasonably achievable」 で、ALARAと呼ばれている。

現在、東京電力のALARA会議の開催基準は以下である。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/492303.pdf

2号機燃料デブリ「試験的」取り出し作業は、ALARA会議でAランクであった。

汚染カメラの人力交換で、計画線量が上方修正

当初の計画集団線量は610人・mSvであった。ALARA会議の日付は6月20日である。

それが、取り出し装置の先端カメラ2台の不具合により、変更される。

いったん、原子炉の中に入れ、燃料デブリをつまんだ装置のカメラ2台が映らなくなったのだ。

どういう操作をしても、映らなくなったカメラは、予定外の作業に入る。

汚染カメラ2台を、人力で交換するというのだ。

https://www.da.nra.go.jp/view/NRA100006337?contents=NRA100006337-002-002#pdf=NRA100006337-002-002
https://www.da.nra.go.jp/view/NRA100006337?contents=NRA100006337-002-002#pdf=NRA100006337-002-002

元々、原子炉から燃料デブリを取り出すための横孔から、作業員が手を突っ込み、汚染カメラを交換するという。

この計画外の作業により、集団計画線量が上方修正される。

610人・mSvから、960人・mSvに上げられる。(ALARA会議の日付は、10月3日)

作業員19名を追加し、個人最大の被ばく線量限度を12mSvから18mSvに引き上げたのだ。

筆者は、この情報を、10月の定例会見で何度も質問し、すでに回答を引き出していた。

市民団体「共の会」への回答は、集団線量360人・mSv!?

東京電力と共に脱原発をめざす会東電共の会)」は、過去35年ほど、東京電力に定期的な交渉を続けている。

事前質問をだし、事前回答を得て、そして交渉にのぞむ、という形だそうだ。

10月24日も東電交渉があり、前日23日に東京電力から事前質問に対する事前回答が出ていた。

その文書によると、「燃料デブリ取り出しの作業員の被ばく線量はどれだけか」という問いの、計画線量を問う回答に、東京電力は「(9月まで)当初の計画線量は約360人・mSv」と回答しているのだ。

「共の会」の方から文書提供

10月3日のALARA会議で、集団計画線量は960人・mSvに引き上げられている。

それなのに、10月24日の交渉で、わざわざ「(9月末まで)当初の計画総線量」を回答しているのだ!

そして、そもそもALARA会議6月20日の当初の計画線量は610人・mSvである。

この「360人・mSv」という数字はいったい何の数字なのか。

筆者は、11月14日以降の会見で、たびたびこの件を質問した。

何度も何度も追及して、やっと返ってきた回答が以下である。

「個別の市民団体との交渉の中での数字については、記者会見で説明しない」

せめて、360人・mSvの数字は何なのか、東京電力の文書での公式回答なのだから説明すべき、と追及して出てきたのが

「360人・mSvは、取り出し装置の設置から据え付けまでの数字。撤去作業の数字は除外している」

とのこと。では当初の計画線量610人・mSvから差し引くと、250人・mSvが撤去作業の数字か、と問うと、

「そういう考え方」

しかし、「共の会」の質問は、作業全体の計画線量を問うており、また、東京電力の回答も、作業全体ではなく据え付け作業までの計画線量で、撤去作業の計画線量は抜いている説明など一切していない。

しかも、東京電力が文書回答した10月23日の時点で、すでに計画集団線量は960人・mSvに上方修正されている。

なのに、撤去作業を抜いた、上方修正する前の「360人・mSv」という数字しか伝えていないのだ!

筆者は、なぜその東電交渉の場で、実際の数字の3分の1ほどの集団線量しか回答せず、それがさも実際の数字のように説明しているのか、問うた。

しかし、東京電力は

「ここは記者会見、記者会見で出す数字が正。それ以上説明しない。
市民団体の交渉の場の数字がなぜ異なるかなどは説明しない」

を繰り返すのみであった。

筆者は、市民団体との交渉という密室の場での説明は、適当にごまかすと受け取られかねない、
東京電力の文書での回答なのだから、会見でも説明すべき、

原発事故を起こした企業としての説明責任を果たすべき、と何度も問うた。

が、「記者会見と市民団体との交渉は違う。個別の交渉についての説明はしない」と繰り返す。

記者会見は、記者に説明する場ではない。
記者は、市民の知る権利の代行者である。記者の後ろに、大勢の市民がいる。
記者会見で、東京電力は、市民に、社会に説明しているのだ。
記者会見と市民団体は異なるのではない。

東京電力の回答が、作業員の被ばく線量という回答が、会見と、密室の市民団体の交渉で数字が異なるのなら、
なぜそういうことになっているのか、きちんと説明すべきだ、
記者会見は、記者に説明するのではなく、市民に、社会に説明する場だ、と問うと

「おしどりさん個人のご意見としてうけたまわります」で終わった。

計画集団線量、数字の整理

6/20 610人・mSv (ALARA会議)

10/3 960人・mSv (ALARA会議)

以上の数字を、筆者は10月半ばの会見ですでに回答を得ている。

10/24 360人・mSv (「共の会」交渉の場での東電の文書回答)

360人・mSv(設置~取り付け)+250人・mSv(撤去作業)=610人・mSv(上方修正前の計画集団線量)

「共の会」への回答は、上方修正前の数字から、撤去作業の数字を抜いたものを回答し、その説明は一切しなかった。

実際は、960人・mSvであったため、約3分の1の数字を市民団体に何の説明もなく伝え、交渉を終わらせていた。

延べ人数と実績の集団線量

12月12日時点で、まだ撤去作業は終わっていない。


11月まで(←要日にち確認)
作業員延べ人数 2527人、実績の集団線量は620人・mSv

今後もこのトピックに関しては取材を続け、更新していく。

東京電力のたびたびの失敗で、しわ寄せがくるのは現場の作業員の方々である。
現場の作業員の方々の、不要な被ばく線量が増えていく。
なので、私たちができることは、作業員の方々が防護されているか、しっかり監視することだ。

しかし、会見と市民団体への回答の数字が異なり、なぜそうなっているかの説明はしない、というなら、
監視機能も欺こうとしていることになる。

東京電力の定例会見は、以下で生配信をおこなっているので、みなさんも会見監視にくわわってほしい。

https://twitcasting.tv/makomelo/show/

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