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【ALPS処理水】「漁業者の理解なくして放出なし」国の決定なので東電と漁連の約束は反故に!?

Byoshidori-makoken

8月 6, 2023
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3行まとめ

・7/27の中長期RM会見において、「漁業者の理解なくして放出なし」の質問が相次いだ。

「理解は人それぞれ」「最終的に事業者判断」と東電・小野CDOが回答。

・前例として、地下バイ・サブドレン放出の際は、県漁連会議での容認をとったが、
今回は同様の容認を県漁連から取らないのか、と筆者が問うと
「前回までは東電判断。今回は国の判断なので、前回と違う」と東電・小野CDOが回答。

(ALPS処理水・海洋投棄のキーワードとして、「漁連との約束」
それには「地下水バイパス」「サブドレン」の経緯が重要となる。

過去のおさらいが多い記事だが、ぜひ最後まで読んでほしい。

「国の判断」として、漁連との約束を反故にしようとする、国や東京電力の体制が良く分かる。

訂正履歴

2023/8/21 16:10 小野明氏の役職を訂正しました。
誤)原子六立地本部副本部長
正)原子力・立地本部副本部長

2023/8/21 16:10 2015年当時の社長を訂正しました。
誤)東京電力・清水社長
正)東京電力・廣瀬社長

2023/8/21 16:10 日付表記を統一しました。
誤)2015/8/11
正)2015年8月11日

2023/8/21 16:10 筆者の東電・小野氏も「国の判断」や「閣議決定」と発言していましたが
正しくは関係閣僚等会議の決定なので、一連を統一して訂正いたします。
(実際の質疑部分は改竄になるので訂正しません)
誤)閣議決定
正)関係閣僚等会議

2023/8/21 16:10 タイトルを訂正しました。
誤)閣議決定
正)国の決定

7/27中長期ロードマップ会見

7/27に中長期ロードマップ会見が開催され(月一回、最終木曜におこなわれる)
そこで廃炉推進カンパニープレジデント・小野明氏に質問が相次いだ。

小野明氏の役職は

・東京電力HD執行役副社長
・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント
・廃炉・汚染水対策最高責任者
・原子力・立地本部副本部長

という肩書になる。「汚染水対策最高責任者」に「ALPS処理水」海洋投棄への質問が相次いだというわけだ。

そこで驚くべき東京電力の解釈・対応が出てきたので共有する。

「漁連の理解なくして放出なし」

まず福島会場からNHK仙台・藤川記者の質問が出た。

「理解なしで放出しないといったのに、漁業者が不信感を募らされている」

それに対する小野・ 汚染水対策最高責任者の回答はこうだ。

「風評被害が起きないように取り組んできている。

科学的根拠に基づく情報をわかりやすく発信したり、販路拡大に取り組んだり、
やっぱり我々としては風評被害をおこさないように取り組んできている。
継続していくことが大事だと思っている。

福島県漁連さまに対しての『理解なくして放出はなし』
これは、きちんと守りたいと思っている。

様々な場で県漁連はじめ、ご懸念、ご不安などをしっかりと伺って、真摯にご説明していく。」

(TV会議動画の模様。福島会場は右上写真)

関連の質問は東京会場から北海道新聞・関口記者から出た。

「漁業者の理解が得られなければ本当に放出しないのか。
どうした状態が『理解を得られる』のか」

それに対する小野・ 汚染水対策最高責任者の回答はこうだ。

「理解のところはなかなか難しい。

理解というのは人それぞれで、これは、われわれ事業者として判断をすべきもの

われわれとしては理解を関係する方々、漁連も含め深めて頂けるように、
われわれの取り組み、不安を受け止めながら、しっかりとお伝えしていく活動を積み重ねていく。

漁連さんとの約束を反故にするつもりはない。」

(北海道新聞・関口記者)

「漁連さんとの約束」とは何か

「ALPS処理水」海洋投棄に先立って、すでに福島第一原発からは汚染水を処理して海に投棄する、という計画が実行されている。
といっても、「ALPS処理水」のように、燃料デブリに触れた超高濃度汚染水ではなく「汚染された地下水」である。

原子炉建屋の山側の「地下水バイパス(略称:地下バイ)」の汚染地下水・海洋投棄計画は2014年に、
建屋周辺の地下水をくみ上げる「サブドレン」の汚染地下水・海洋投棄計画は2015年に実行されている。

地下水バイパス

地下水バイパスは建屋より山側に施工されたので、本来はくみ上げた地下水はあまり汚染されていないはずだった。

しかしその上流側のH4エリアタンクから2013/8/19に高濃度汚染水が環境中に漏えいし、放水路をつたってそのまま海に流れたり、地中に沁み込んだりした。
(東京オリンピックの誘致が決まる直前の事故で、原子力規制委から「レベル3」の汚染水漏えい事故と認定された)
地下水バイパスからくみ上げる地下水に、その汚染水が流れ込む前に吸収できるよう、
アパタイト壁などを地中に埋め込んだりもした。

が、その効果はあまり無く、H4エリアタンクの下流側の地下バイ揚水井からは、他と比べ濃度の高い放射性物質が検出されている。

くみ上げた地下水から放射性物質を除去して、港湾内に投棄するのが地下水バイパスの計画である。

サブドレン

原子炉建屋周辺には、地下水をくみ上げるためのサブドレンが事故前から元々あった。
福島第一原発周辺は地下水が豊富な土地で、地下水をくみ上げなければ、建屋の「浮き」が発生するためだ。

原発事故発生後、建屋周辺の地下水が建屋地下に流れ込み、超高濃度汚染水が日々発生する状況となった。

大口径のサブドレンを増やし、建屋周辺の地下水くみ上げ量を増やすことで、建屋地下への地下水流入を減少させている。
原子力規制委員会は、陸側遮水癖(凍土壁)の効果は限定的で、サブドレンが地下水流入対策に最も効果があると評価している。

建屋周辺のサブドレンのうち海側のものは放射性物質の濃度が高い。
しかし濃度の低い地下水と混合し、放射性物質除去の処理をして、港湾内に投棄している。

この、地下水バイパスやサブドレンの計画のときに作られたのが
「告示濃度限度比の総和」という考え方で、
トリチウムの「運用濃度」1500Bq/Lというのは、このときに作られた。

それが、今回の「ALPS処理水」海洋投棄にも、使われている。

2018/8/30 「トリチウム1500Bq/L」は厳しすぎるのではなく、他の核種や線源があるから。

「地下バイ」や「サブドレン」のときの福島県漁連

地下水バイパス計画も、サブドレン計画も、当初は漁業関係者は反対していた。

が、東京電力や国の説得に応じる形で条件付きの容認をする。

地下水バイパスは2014年3月に福島県漁連と6つの漁協の組合長からなる会議で容認された。

2014/3/25 NHK記事

サブドレンは2015年8月に、最後まで態度を決めていなかった、いわき市漁協が受け入れを決め、福島県漁連が会議で容認を決定した。

2015/8/11 NHK記事

「関係者の理解なしに、いかなる処分もおこなわない」

このサブドレン計画を福島県漁連が容認した際に、漁連が要望書を提出し、東京電力が回答を出した。

そこには「ALPS処理水」に関して重要な記述がある。

https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf

サブドレンや地下バイのように、漁連だけを説得して海洋投棄されては困る、
「ALPS処理水」は、汚染地下水ではなく、燃料デブリに触れた高濃度汚染水なので、
漁連だけではなく、全国民的に議論すべきだ、福島県漁連・野崎会長はそう主張してきた。

https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf

「ALPS処理水」は発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、
漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事

この福島県漁連からの要望に対し、東京電力・廣瀬社長(当時)はこう回答している。

関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、
多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。

これが福島県漁連と東京電力の「ALPS処理水」に関しての約束である。

「漁業者の理解なくして放出なし」 は東電と漁連の約束。
今回は国の決定なので!!

さて、7月27日の中長期ロードマップ会見に話を戻す。

NHK仙台・藤川記者、北海道新聞・関口記者の質疑を踏まえて、筆者が質問した。

「ALPS処理水」海洋投棄に限って「理解というのは人それぞれ」と東電が言い出すのに違和感がある。

2014の地下バイ放出や2015のサブドレン放出の際は、福島県漁連、漁協に説得を続け、
最終的に、漁連の会議での容認を取り、海洋投棄した。

その際にALPS処理水は「漁業者の理解なくして放出なし」と約束した。

「ALPS処理水」海洋投棄の、「漁業者の理解」というのは、
地下バイやサブドレンのときと同じように、県漁連や漁協の会議での「容認」という形ではないのか?

東電・小野氏の回答は驚くべきものだった。

「今回は、サブドレンや地下バイと違い、国の判断。関係閣僚会議で夏頃の放出と決められている。

なので、地下バイやサブドレンのときと判断が違う。当社のみで判断するものではない。」

つまり、ALPS処理水の海洋放出に関しての取り決め「漁業者の理解なくして放出なし」
これは漁業者と東電のみの約束であって、今回は国の決定なので、
東京電力としては、地下バイ・サブドレンのような漁業者の明確な容認を待たない、と
のことだった。

そのやりとりの全文は下記である。

小野明・廃炉推進カンパニーCDO、廃炉・汚染水対策最高責任者

7/27 中長期RM会議での筆者の質疑、ALPS処理水と「漁業者の理解」に関わる部分

ーーさきほどの質疑で、県漁連の理解が得られなければ放出しないというのは、どうした状態は理解を得られるのか、という質問に対し
理解というのは人それぞれ これはわれわれ事業者として判断をすべきもの」 と小野氏は回答されました。

県漁連が理解した、という状態がどのような状態か、イメージしていないのですか?

小野:理解については人それぞれのものなので、
我々が一概にこれ理解してもらったという判断をすべきものではないと考えてると申しました。

ーーそれに関連して。小野さんは2013年から2016年まで福島第一の所長でした。

ご存じと思いますが、2014年の地下水バイパスの海洋放出の際は、3月25日に、
サブドレン水の海洋放出の際は2015年8月11日に、
それぞれ、福島県漁連と県内の6つの漁協の組合長などの会議で明確に承認を取って
その後、地下水バイパスは2014年に、漁連は2015年に海洋放出を始められました。

このような前例があるにも関わらず、ALPS処理水に関して地下水とサブドレンの様に、
県漁連と県内の6つの漁協の組合長の承認を得ることはない、という事ですか?

小野:先ほどから申しているようにまずは、きちんと理解を得られるように我々としては今、
色々な漁連さん含め、大半を説明と対応さしていただいているところです。

まだ、放出しているわけでも何でもないんで、
放出する前にはしっかりとご理解を得られるように我々それに向けて努力をしているという事になります。

ーーですのでそのゴールを御社が過去に2014年、2015年地下水バイパスとサブドレンの放出の際に
過去にゴールとされていた、県漁連と6つの漁連組合長との承認を取るという事がゴールではないのですか?
県漁連の方々への理解という形のゴールは。

それと同様の県漁連と6つの漁連組合長の承認を彼らの会議で、
御社が出席している場で取るという、同じ形は今回取られないという事ですか?

小野:あの、すいません。あの時には国は基本的に絡んでなかったと、私は思いますけれども、
今回のALPS処理水に関しても全て、国の関係閣僚会議の場で、
例えば今年の1月には放出開始の目標時期について春から夏ごろといった、判断をいただいています。

そういう意味でやっぱり判断の仕方というのは、多分違ってくるんだと私は思っています。

ーー小野さんはお忘れかもしれませんが、
2014年の地下水バイパスの際と、2015年8月のサブドレン海洋放出の際は、
国の決定されたものではないですけれども、国の担当者と御社の担当者も漁連の会議に出席されていました。

で、今回は国が決定したので、サブドレンと地下水バイパスの様に
県漁連と6つの漁連組合長の承認を得る必要がない、という意味のことをご回答されたん…

(筆者の質問中、小野氏が割って入って)

小野:いや、違います。判断の仕方がちがっているという事を言っています。
多分私、今後ですね、さっきも申した通り国の関係閣僚等会議の場で放出開始の目標時期というのは、
一応春から夏ごろという風に示された事もありますんで、

それと同じように、海洋放出に当たっては最終的に今後、安全性の確保だとか風評対策の取り組みの状況なんかを、多分これ、政府全体で確認をして判断していくものだと私は承知している。

ーー私が質問している主旨は、国の判断関係なく、御社が仰っている、
「福島県漁連の理解得られずして海洋放出はしない」という中身を聞いているんです。

御社が、小野さんが何度も口にされている、県漁連の理解得ずして、海洋放出をしないという、
その「理解」というのは、地下水バイパスやサブドレン、2014年2015年の海洋放出の時と同じように、
県漁連と県内6つの漁連組合長の承認を得るという形であるのかどうか、という事を聞いています

小野:私が言っているのは、先ほどおしどりさんもお認めになられましたけども、
閣議決定を当時はしてるものではないですよね?
今回は閣議決定という非常に思い判断をしながらやってきているところがあるので、
判断の仕方がそもそも変わってくる、という事を申しております。

ーー質問の主旨が伝わっていないんですけども、閣議決定があろうがあるまいが、
小野さんが仰っている県漁連の理解を得るという形が、
地下水バイパスとサブドレンの時と違うという意味のことを仰っているんですか?

その、閣議決定が重い判断が、(小野氏が割り込んで発言)すいません、私が聞いています、
質問の主旨が伝わっていていないので私が丁寧に説明しています。
閣議決定という重い判断があるので、地下水バイパスとサブドレンの時と漁協の理解を得るという形式が異なるという意味のご説明をされたんですか?そういう理解でいいですか?

小野:私としては当然ながら、ご理解をいただく活動、これは今後も継続して参りますし、
これまでやってきたところだと思っています。
これは東京電力のみならず、国の方からもやっていただいたというところがあると思います。

ただ、最終的に放出の判断をする時に、多分、地下水バイパスの時とかとは違ってくるだろうと申しております。

ーーでは確認ですが、小野さんが仰っている漁連への理解というのは、地下水バイパスとサブドレンの時の会議で明確に理解を得るという形ではないという事ですね?今回は。閣議決定があるので。

小野:多分、放出の判断をする一つの大きなポイントというのは、
関係閣僚等会議みたいな場で、政府全体として
最終的に安全性の確保だとか、
風評対策の取り組みの状況なんかを見ながらですね…(風評被害対策の説明など)

ーーすいませんYesかNoで答えられる質問をしてるので、明確に、論点をそらさずに、
関係のないことを仰らずに質問に対してお答えください。

小野さんが仰っていた県漁連の理解というのは、今回国の決定が入っているので、
2014年の地下水バイパスと2015年のサブドレンの時と異なるのかどうか、という事を聞いているんです。
明確にYesかNoで答えれる問題なので、質問をそらさずにお答えください。

小野:判断の仕方が違っていると言っています。以上です。

ーーその理解を得られたという判断の仕方が違っているという事ですね?

地下水バイパスとサブドレンの時と違うという事ですね?

小野:当社のみで判断するようなものではないという事を申しております。以上です。



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