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【速報】聖火リレーのスタート地点の汚染は100万ベクレル/kgを超えていた(東電測定)

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3行まとめ

・昨年11月、聖火リレーのスタート地点Jヴィレッジで高線量汚染が見つかった。

・12月3日に東京電力がJヴィレッジの汚染土壌を除去し、原因など分析をすると説明していた。

・東電自らは土壌分析結果を公表せず、2月に取材したところ、103万ベクレル/kgの地点などがあることが分かった。

聖火リレーはJヴィレッジから始まる

 2020東京オリンピックの聖火リレーの「グランドスタート」は福島県のJヴィレッジから始まる。

https://tokyo2020.org/jp/special/torch/olympic/schedule/

 福島第一原発に近いサッカー施設「Jヴィレッジ」は長らく原発事故収束作業の拠点となっていた。
 福島第一原発・第二原発と、近隣に原発10基を建設した東京電力が、福島県に寄贈したサッカー施設で、現在も東京電力が出資した会社が運営を担う。

 「復興五輪」の位置づけで、原発事故(というより地元と東京電力)の象徴ともいえる「Jヴィレッジ」から聖火リレーをスタートさせるというのだ。

 福島第一原発から南に約20キロのJヴィレッジ、汚染状況はどうなのだろうか?

グリーンピースが高濃度汚染を発見、東京電力は慌てて除染

2019年10月にJヴィレッジの空間線量を測定したグリーンピースは複数のホットスポットを見つける。最大は地表面で毎時71μSv、高さ1mで毎時1.7μSvの地点。
(これは除染の目安である毎時0.23μSvの308.7倍、
原発事故前の毎時0.04μSvの1,775倍にあたる)

 グリーンピースは測定結果と提言を、環境大臣、IOC会長、JOC会長、福島県知事に送る。結果、12月2日に環境省、自治体、東京電力、Jヴィレッジが協議し、12月3日に東京電力が現場周辺の土壌80cm×50cmを撤去したという。 

 そして東京電力は
「現在、原因などを含めて詳しく分析しています。
その結果を踏まえ、適切に対応してまいります」
とコメントしていた。ではその分析結果は???

シュガーナット氏「福島第二に採取した土壌を保管している」

 筆者は2月9日に取材を続けるシュガーナット氏から「東京電力はJヴィレッジから採取した土壌を福島第二に保管しているようだ、けどのその後の分析結果がどうなっているのか」という情報提供を受けた。

 それを受けて2月10日の東京電力記者会見で質問すると「どういう状況か詳細を確認する」2月13日の会見では「答えられるかどうかも含め検討中」

 しかし、2月13日に会見後のぶら下がりで、情報が出てきた。

2020/2/13東京電力会見ぶら下がり(撮影おしどりケン)

103万ベクレル/kg!!!!

 東京電力は報道で出ていた12月3日だけでなく、9日10日11日も調査と除染をしており、計6か所の土壌を採取、3回測定していた。

Jヴィレッジ高線量地点、東電による空間線量調査(表は筆者作成)

 地点Aが、グリーンピースの測定で最も高かった地点である。
その他にも、地点Dなど地上1cmで毎時27μSvだが、地上1mだと毎時0.465μSvのところなど、様々な汚染が伺える。
 地上で高汚染があっても、狭い範囲であれば地上1mの空間線量にあまり影響を与えない。このような汚染を「点の汚染」という。しかし環境中の高濃度の放射性物質が存在することには変わらない。
 なので、電離放射線障害防止規則の労働安全の観点からは、空間線量だけではなく、表面汚染も測定し評価する。
(しかし日本の原発事故後、避難区域を検討するためのの表面汚染の測定、評価はされていない。「空間線量で評価しておおよそ問題ない」という観点からだ。チェルノブイリ原発事故のときは表面汚染で避難区域を検討した)

さて、土壌中の放射性物質の量はというと…

Jヴィレッジ高線量地点、東電による土壌分析結果(表は筆者が作成)

 もっとも空間線量が高かった地点Aはセシウムの合算で103万ベクレル/kgであった。
 地点B,C、地点D,E,Fは合わせての測定になっている。
 筆者が気になったのはセシウム134の濃度だ。
 セシウム134は半減期が2年、セシウム137は半減期が30年なので、セシウム134の減衰のほうが早いはずだが、事故から9年だと、セシウム134セシウムはまだ137と1桁程度しか変わらない。

 他の核種は調べないのか、今後の土壌調査はどうなるのか、環境省の局所汚染地点のガイドラインに沿って詳細調査はしないのか、と問うと、東京電力の回答は
「今のところこれ以上の調査は聞いていない」とのことであった。

 まとめ:原発事故対応と新型コロナ対応

 筆者が記事を書いている前日、2月15日は、聖火リレーのリハーサルが各地で行われ、それが報じられていた。
 しかし、聖火リレーのスタート地点の高汚染を、国や県や東電は自ら公表しなかった。グリーンピースの測定が無ければ分からなかった。
 良いパフォーマンスはするが、悪い情報は出してこない、そういう国だ。
 
 また、その後の土壌調査、セシウムが合算で100万ベクレル/kg以上あったことなど、東京電力は口頭での説明のみで、資料も公表していない。
(東電広報が手元資料を筆者に見えないように読み上げるのみであった)
(当初はセシウム合算値のみの回答だったが、広報が手元で隠していた部分にそれぞれの値があり、それを見つけた筆者が回答すべきと迫り回答を得た)

東京電力が口頭で回答する情報を書きとめる筆者(撮影おしどりケン)


 東京オリンピック自体、汚染水の漏えい事故が相次いだ2013年に、「福島第一はアンダーコントロール」「汚染水は港湾内にブロック」という嘘で招致が決まった「復興」オリンピックである。
 福島第一原発の汚染水漏えい事故がレベル3と認定された10日後に、「アンダーコントロール」「ブロック」発言だったので、当時の東京電力では、海外、国内のメディアから疑問の質問が相次いだ。

 さて、聖火リレーのスタート地点の土壌は100万ベクレル/kgを超えており、グリーンピースの指摘が無ければ除染せず、シュガーナット氏の指摘を得て筆者が取材しなければ、東京電力は自ら情報を出さなかった。
 オリンピック委員会や国はこの汚染土壌の分析結果を知りたくなかったのだろうか? 

 悪い情報は出てこない。情報は隠される。情報の隠ぺいは、改ざんや黒塗りだけでなく「調べない」という隠し方もある。情報を作らなければそもそも隠す情報も無くなる。
 筆者は2016年ドイツのPTB(国立物理工学研究所)を取材したとき、若い研究者に「なぜ日本は調べないのか、調べないからといって無かったことにはならないのに」と言われたこともある。

 内部被ばく検査、土壌調査、海水調査、食品検査、甲状腺検査、健康診断、調べてほしい、と地元の方々が要望しながら、調べられなかったことがどれだけあるだろう! 半減期8日のヨウ素131の実測値は永久に分からなくなってしまった。

 現在、新型コロナウィルスが全世界を襲っている。日本政府の対応が、原発事故後の対応とかぶって見えるのは私だけだろうか。
 原発事故後、調べない、避難させないという対応をとった日本は
ダイアモンド・プリンセス号の乗客に対して、検査しない、下船させない、という対応をとった。
 各国が防疫・経済打撃に対しての目に見える対策を取る中、日本は「人ごみには行かないよう」という自己責任論である。(ちなみに原発事故後の汚染地域の農家に対しての注意喚起も「自己責任論」だ!)

 原発事故は日本で起こったことだが、中国で発生した新型コロナウィルスによる対応は、各国共通の問題でもある。
 世界は日本の対応に不信感を抱き、日本が出し続けていた原発事故後の「調べない、そして問題ない」というメッセージのおかしさに気が付いてほしいものである。

東電会見の参加記者は激減した。知りたがる人間が減れば情報は出てこなくなる。
記者が減った理由は様々だが、一つに「世間の関心が減った」ということもある。

訂正履歴
2020/2/16 13:45 表の地点Aの97万Bqを9万と一桁間違えていたため修正
2020/2/16 20:02 表の空間線量の単位に誤記があったため修正

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