3行まとめ

・2月26日の東電会見で、汚染水に関して筆者が質問した内容を、ぶら下がりにおいて、東京電力社員から訂正された。

・27日、原子力規制庁に確認したところ「東京電力のほうが勉強不足である」ということであった。

・汚染雨水の海への流出に関しての東京電力の本音「測ってしまったから出てしまった」

 

海へ流出する汚染水が告示濃度を超えているかは「外の海水の値で十分」

2月26日の東京電力の中長期ロードマップ会見において、筆者が複数質問した。

その、汚染水に関する質疑の中、会見後に、訂正された部分を抜粋する。

(26日の会見中に、@iss2014 氏が質疑の動画を切り出してくださっていたので、それを引用する)

 

 

 

質疑部分抜粋(書き起こし:おしどりケン)

質問:おしどりマコ

会見者:福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント 増田 尚宏(ますだ なおひろ)

(それまでの他の記者との質疑の中で、増田氏から

「いつからK排水路を測定していたかちょっとわからない、自分は4月からこの位置にいる」

「K排水路の測定値はみなさんが欲しがっている情報だとは思わなかった」という回答が出ていた)

 

ーーK排水路について伺いたいのですが。

増田さんが先程、「皆さんが欲しがっている情報だと思わなかった」と仰っておられましたが、私は2013年から「K排水路の測定値を公開して欲しい」と要望しておりました。

私が知る限り、K排水路の測定値が新規採取点として規制庁に報告が上がったのが2013年11月からで、サンプリング採取して測定し始めたのは11月の6日からです。

その時点で、海に流れている排水の全ベータの値などは、告示濃度限度に限りなく近かったですので。

「海に流れている汚染水として測定値を公表してください」と2013年から要望しておりました。

で、2014年6月16日の東京電力の定例会見にて、白井さんにはっきりと「今の段階で知らせることはない」と言う回答を頂きました。

その間ずっと公開を要望していたのですが。すいません!以前から私はK排水路の測定値の公開の要望をお願いしていたのですが、それが全く公開されなかったという事について。

欲しがっていたのですが、なぜ公開してくださらなかったのでしょうか。

すいません、質問がたくさんありますので端的にお答えいただければ。

増田:すいません、今の質問は我々がなぜ、情報を公開してなかったのかというところですか。

ーーそうですあの、海水に…

「海に放出する汚染水として告示濃度限度を超えたものを放出していた」と、すでにいくつか公開されていましたので。

「定期的にこの値を公表して欲しい」とずっと要望していたのですが。「知らせる段階にない」と。

少なくとも昨年の6月には何度も断られております。K排水路の測定値です。

増田:はい、えーと。ですからそこについては、去年の3月の監視評価検討会の席上で「1年かけてしっかり清掃しろ」と言う指示を規制庁からもいただいてますので、それに取り組んでいたというところです。

ーーはい存じております。

あの、「皆さんの欲しがっている情報と思っなかったので公開しなかった」とおっしゃられましたので…

欲しがっていたが、公開されなかった。という事に関してです。

増田:はい、私達はそのK排水路の出口の所の外の海のところのモニタリングデータを公開しています。

私はそれで充分だというふうに認識していたという所があります。

ーーわかりました。

すいません、海水に出ている時点では海水に希釈されていますので、そのご回答ですと排水の告示濃度限度という概念をご理解していないと思うのですが。

希釈された時点での測定値ではなく、環境中に排水していい告示濃度の限度なので。

どのような水を放水しているか。ということが重要ですので、「そのデータを公開して欲しい」とずっと要望しているのですね。

すいません、希釈して環境中に出た時点での測定値でいいのなら、排水の告示濃度限度という概念自体意味がないですよね。

増田:それで、去年の監視評価検討会の席上で「早く清掃してそういったものが守られるようなレベルまで、あるいはそういった議論できる、そういった管理ができるレベルまで下げなさい」と云うのが監視評価検討会からの指示だと思うので、、、。

ーーわかりました。

(まだ質疑は続く)

 

(ちなみに、会見終了時に、「記者さんの質問に回答するが、すでにおしどりさんの質疑の中で回答が出ている。K排水路のサンプリングの最初は2013年11月6日からで、規制庁の面談資料に出ている」

と発表があった。

K排水路の汚染水流出に関する会見なので、少なくとも会見者は基本的な情報は押さえておいてほしい。)

 

つまり、K排水路から海に出ている水は、排水の告示濃度限度を超えている可能性が高いので、

その測定値を公開してほしい、と筆者は数年前から要望していたが、公開がなかった。

その理由を増田氏は「K排水路の外の海水の測定値で十分だと思っていた」と説明された。

「それは排水の告示濃度限度の概念を理解しておられない、

海水で希釈された後の測定値ではなく、どのようなレベルの汚染水を放出しているのか、

告示濃度を超えているのかいないのか、その測定値を出すべきだ」というやりとりである。

撮影:おしどりケン

撮影:おしどりケン

 

「告示濃度は『排水』ではなく『周辺監視区域』なので増田の考え方で合っている」

会見終了後、ぶら下がり取材をしている際、東京電力から訂正が入った。

「増田との質疑の中で、『告示濃度限度は排水に関する数字』とおしどりさんは言っていたが、

『排水』ではなく『周辺監視区域』にかかる数字なので、増田の考え方で合っている。

おしどりさんは勘違いしている。」

そう言って、見せられたのが、原子力規制庁のHPである。

 

東京電力社員2名に説明されたので、筆者は驚いた。

告示濃度限度が、排水ではなく、「周辺監視区域」にかかるもので、汚染水流出後の海水で判断していいのなら、希釈し放題である。

しかも「周辺監視区域」というアバウトなものなら、汚染水が流出したポイントからどれくらい離れた海水での判断かもよくわからない。

少なくとも、水質汚濁防止法の有害物質の告示濃度は全て排水にかかわるものである。

放射性物質だけ、環境法の中で超法規的に扱われているが、この告示濃度もそうなのだろうか?

このぶら下がり取材の際に、2名の東京電力社員から訂正される。 撮影:おしどりケン

このぶら下がり取材の際に、2名の東京電力社員から訂正される。
撮影:おしどりケン

 

 

「東京電力のその発言をした者は勉強不足」(原子力規制庁)

27日、筆者は原子力規制庁に電話取材をした。

回答してくださったのは金城慎司・東京電力福島第一原子力発電所事故対策室長である。

 

告示濃度限度は、『周辺監視区域』ではなく、『排水』にかかるものである。

実用炉、研究炉など、様々扱い・表現は異なっているが、現在、福島第一原発にかかる法律では、

告示濃度限度は、はっきりと『排水』にかかるものと、明示してある。

その回答した東電の人は、勉強不足なのだろう。

実用炉をやったことしかない人なのではないか、そうであればその表現になっているので。」

東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25F31901000002.html より

東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25F31901000002.html より

 

「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則」(保安防護規則)の

第16条7項を金城室長は読み上げた。

排水中の放射性物質の濃度が原子力規制委員会の定める濃度限度を超えないようにすること。

この濃度限度とは、炉規則の告示濃度限度と同じです。」

炉規則の告示濃度限度とは、セシウム134が60Bq/L、セシウム137が90Bq/L、ストロンチウム90が30Bq/Lというもの、東京電力の社員が、規制委員会のHPを見せてきたものと同じものである。

 

雨水と汚染水

この機会に、筆者は金城室長に今回のK排水路の汚染水流出の件を取材し、状況を把握したので整理する。

この福島第一原発を規制する保安防護規則に関する「告示濃度限度」の部分は、実は液体廃棄物にかかるものなのである。

現在、液体廃棄物ではなく、「雨水」、原発事故由来のフォールアウトで汚染された雨水は、

告示濃度限度を超えた汚染水であっても、この保安防護規則にはかからない。

「だからといって、規制庁も看過しているわけではない」

そのまま告示濃度限度を超えた雨水、つまり汚染水を規制せずそのまま海に流しっぱなしは良くない、というわけで

雨水といえど、告示濃度限度を超えた汚染水は、液体廃棄物と同等に扱うように、という指示を去年の2月3月と出しているんです。」

 

しかしその指示は守られず、汚染水の測定値は筆者がどれだけ要望しても公表されず、現在に至る。

東京電力はどうとらえていたのだろうか。会見ではない場面で取材した。

 

東京電力の本音「測ったから、出てしまった」

「たしかに、以前から、この件をおしどりさんは追及していたけれど…

言いにくいけれど、『測ったから出てしまった』という部分はある。」

ーー測らなかったら、わからなかったということ?

「そう。フォールアウトで汚染された雨水は、この程度、過去のほうがもっと高濃度のものが海に流れていただろう。

でも測っていなかったから、それはわからない。

けど2011年、2012年、2013年のほうが、確実にもっと汚染された雨水なのは当たり前。

それがあちこちの排水路、地下水から海に出ていただろう。」

ーー雨水は、告示濃度限度を超えても、液体廃棄物ではないから、汚染水としてみなされないということ?

「こんな言い方をしてはダメなんだけれど………

海から陸にあげた瞬間に、産業廃棄物になってしまう…わかります?」

 

つまり、自然環境中にある放射性物質は、測定したり、取り出したりしないかぎり、法律に触れないのである!

 

この状態は、あちこちの自治体で聞いた話でもある。

放射性物質で汚染された土壌を、個人で除去して、それを処分してほしい、と役所に持ち込むと、

「それはあなたの放射性廃棄物だから、自分で責任を持って処理してください」と言われてしまう。

(松戸市の市議、DELI氏も同様のことを話していた。)

 

現在の日本の法律では、福島第一原発事故後の状況に対応できていないことがおわかり頂けるだろうか。

 

東京電力の本音「フォールアウト分はもう報告してある」

ーーフォールアウトであっても、汚染は汚染ですよね?

「う~ん、それも何ていうか、フォールアウトの量、環境中に放出してある放射性物質の量はすでに報告してありますよね?」

ーーあの、MELCORとか解析ソフトとかでいろいろ評価して出した『放出放射能量』ですか? 数年前に出てたもの?

「そう、なので、その原発事故発災時に環境中に出た放射性物質の量はすでに出してあるでしょう、

それがフォールアウトとして散らばっていて、それが雨水に含まれる。

なので、フォールアウトの汚染を雨水が含んで海に出すものを、新たに数字で出していく、というのは、違うんですよね…」

ーー新たに環境中に出した放射性物質の数字ではない、というわけですか?

「そうです。もう、すでに環境中に放出したものとして発表した数字のものだから…」

ーーまぁ、数年前に発表した放出放射能量の数字に、フォールアウトでの汚染雨水による放射性物質の量を足し算していく、

という考え方では、正確な数字ではないというわけですね。

「そうなんです。現在フォールアウトによる汚染は、環境中に、海に放出したといっても、

一旦もう環境中に出した放射性物質として報告してあるので、報告対象にはならないんです。」

 

筆者はこの話を聞いて、会見で繰り返される「フォールアウトだから」「雨水だから」の言い訳の意味がやっと理解できた。

理解できても、納得するかどうかは別であるが。

環境へのダメージを少しでも低減していく、という意味で、

環境中に散らばっている放射性物質、フォールアウトも、除去できるものはしてほしい。

 しかし、現況は、それを規制する法律もなく、測定しなければ無視できる状態なのである。