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【福島第一】港湾内のクロソイ250Bq/kg【取材メモ】

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6月 28, 2021
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3行まとめ

・6/28東電会見にて、福島第一原発港湾内のクロソイ250Bq/kgが公表。
2月と4月にも福島県沖のクロソイから高濃度のセシウムが検出
福島第一原発港湾内の魚の出入りの可能性が指摘
・会見で港湾口の閉合性を問うも、確認は取れておらず

2021/6/28 福島第一原発港湾内、クロソイ250Bq/kg

6月28日の東京電力定例会見にて、魚介類の分析結果の速報値が公表された。
その中で、物揚場付近のクロソイのセシウムが250Bq/kgと高濃度であった。

(原発事故後に定められた、食品の放射性物質の基準値はセシウムで100Bq/kgである。この値はそれを上回っている)

https://www.tepco.co.jp/decommission/data/analysis/pdf_csv/2021/2q/fish01_210625-j.pdf

筆者が個体のサイズを質問すると、22cm、180gとのことであった。
魚齢は確認とのこと。

魚齢と汚染度

 筆者は、様々な学会発表で、魚介類の汚染状況の調査研究を見ている。
 様々な魚種で、耳石や個体サイズなどから魚齢を推定し、魚齢と汚染度の相関が調べられている。

 興味深いのは、原発事故を経験した魚と、事故後に生まれた魚で、汚染度が大きく異なることだ。無論、2011年度以前に生まれた魚齢の方が汚染度が高い。
各所で同様の発表を見て、魚介類にも初期被ばくがあるのか、と筆者は驚いた。

 しかし、原発事故後、年月が経つにつれて、汚染度はどんどん下がっている。福島第一原発港湾内の魚介類であっても、100Bq/kgを超えることは稀で、港湾外、福島県沖の魚介類は、検出限界値以下が99%といっても過言ではない。

 しかし、2021年、今年になって、福島県沖の各所で、基準値超えのクロソイが見つかっている。

2021/2/22 福島県新地町沖のクロソイ500Bq/kg

 今年の2月、試験操業で水揚げしたクロソイから500Bq/kgのセシウムが検出され、福島県漁連はクロソイの出荷を停止した。
  クロソイの捕獲場所は、新地町沖合8.8キロ、水深24メートル。
 福島県沖で基準値を超える魚類が検出されたのは2年ぶりで、2020年2月に全ての魚種で出荷制限が解除されていた。

福島県水産海洋研究センター放射能研究部の神山享一部長は
「新地町沖の海水や海底の放射性物質の濃度が低いことを考慮しても、ここまで高い数値の放射性セシウムが検出された理由は分からないというのが本音です。福島第一原発の港湾内で魚が出入りしている可能性も視野に入れながら、原因を調査していきたい」
と話しています。

https://web.archive.org/web/20210223040016/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210222/k10012880681000.html

 福島県漁連はクロソイの出荷の自粛をするも、国はその後の個体で基準値を上回るものが無いとし、出荷制限を行わなず、県が検査を続けていた。
 しかし、4月にも基準値を上回るクロソイが見つかる。  

2021/4/1 福島県南相馬市沖のクロソイ270Bq/kg

 今年の4月、南相馬市沖のクロソイから270Bq/kgのセシウムが検出される。
 捕獲場所は鹿島区沖の水深37メートル。

 これを受けて、4/19付けで、国の原子力災害対策本部はクロソイの出荷制限を指示。
(福島県漁連の対応と比べて、国の対応は遅い!)

参考:https://archive.is/TlfvX

港湾外の魚の出入りは防げているのか!?

 2月の段階で、すでに、福島第一原発港湾内の魚の流出の可能性が指摘されている。
 港湾内には今も放射性物質は流れ込んでいるが、2015年、2016年頃と比較すれば各段に低減した。
 海水の希釈は偉大で、海に排水された時点、港湾口ですでにかなり希釈される。港湾から離れれば離れるほど、汚染は希釈され、影響がほとんど無くなる。
 しかし、海底土の汚染度は高く、それは希釈されない。なので港湾内の海底はコンクリートなどでできるだけ覆っている(フェーシング)。
 そして、排水口付近の海水の汚染度は高いため、港湾内の魚が、港湾外に流出しないよう、出入りできるポイントに刺し網を設置したり、港湾口にブロックフェンスを設置したりという対策を東京電力は行っている。

2017/3/2 港湾口のブロックフェンスが転倒

 2017年3月2日の東京電力会見にて、港湾口のブロックフェンス90mのうち半分の約45メートルが転倒しており、魚の出入り抑制ができていないことが発表された。

https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2017/images1/handouts_170302_07-j.pdf

当時の会見者、川村信一氏と筆者とのやりとりを抜粋する。

マコ: 3/1にブロックフェンスの転倒に気付いたということで、最後の確認はいつしたのか?
川村氏:最後の確認は2015年5月。
マコ:点検のスパンはどれくらい?
川村氏:頻度を決めた点検はおこなっていない。
マコ:今後は、転倒が見つかったということで、頻度を決めた点検はおこなう?
川村氏:今後も頻度を決めた点検の実施は難しいと考えている。
ただ何らかの形で見るチャンスはあるのでそういうときを捉えて見ていく。
不定期に確認ができそうなときに確認をするという感じ。
マコ:転倒の原因の推定はできているか
川村氏:2016年11月の地震による津波の影響もあるかもしれないが
見てないのではっきりとしたことは分からない。

2017/7/13 ブロックフェンス補修完了

 港湾口のブロックフェンスの補修が完了したのは、4か月後の7月13日である。
 7/4から7/13の10日間かけて補修工事を完了したと発表があった。
 ブロックフェンスの調達に時間がかかり、(特注のため)補修に時間がかかったとのことであった。

https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2017/images2/handouts_170713_01-j.pdf

2021年現在の港湾口はどうなっているのか!?

 福島県沖の各地で基準値超えのクロソイが確認されたこと、港湾内のクロソイも基準値を超えていたことから、港湾口のブロックフェンスは現在どうなっているのか、と筆者は質問した。
 しかし、会見者小林氏の回答は
「確認する。情報を把握していない。」とのことであった。

2017年の港湾口のブロックフェンス転倒後、定期的な点検はしているのか、もしくはどこかのタイミングでブロックフェンスの確認はできたのか、と問うと
「確認する。情報を把握していない」とのこと。

 福島県沖で基準値超えのクロソイが確認された際に、港湾内の魚の流出の可能性が指摘されていたが、それを受けて、改めて港湾口などの確認はしていないのか、と問うても
「分からない。確認する」とのことであった。

回答があれば、また追記する。

2021/6/28東電会見 (撮影:おしどりケン)

物揚場前、という場所への懸念

 今回の基準値超えのクロソイの捕獲場所が物揚場前というのも筆者は気になる。
 物揚場排水路で、高警報が鳴り、汚染水の漏えいがあったのは今年の3月2日である。γ線だけではなくβ線も高く、何らかの汚染水の漏えいが予想された。

 その後、物揚場排水路付近のW2エリアの保管していたコンテナが腐食しており、高線量のゲル状のものが排水路に流れ込んだと推定された。
 W2エリアのコンテナを移送する作業は1/25から3/2で、それまでも、警報が鳴らないまでも、降雨があるたび、ある程度高レベルのβ線が放射線モニタに計測されていたことは説明された。

 この一連の事故を受けて、現在、東京電力はコンテナの腐食調査、中身の調査、所在を把握していなかったコンテナの調査などをおこなっている。

 今年になって、福島県沖の各地で高線量のクロソイが見つかったこと、港湾内の高線量のクロソイは物揚場前が捕獲場所だったことから、このコンテナの漏えいの影響も筆者は懸念する。

 だとすれば、セシウムだけではなく、ストロンチウム90というβ核種の測定も必要である。今回は速報値であったため、セシウムだけの値であったが、ストロンチウム90の測定なども行うかどうかなどの取材も継続する。

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