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3行まとめ

・3/10に内部被ばくの事故があり、3/11に簡単に報告された。

・福島第一の経験が9年の東電社員(50代男性)が、建屋内で全面マスクの中に手を入れ眼鏡の曇りや位置を直し、気付かないうちにタイベックが破れていたという報告であった。

・3/22の規制庁・検討会で、規制庁現地所長により、その東電社員は建屋内で迷い、2時間出られなくなり、計画線量を超え、助けを求めて出てきた、という事故であったことが報告された。

建屋内で2時間迷って、身体汚染

 2021年3月22日に原子力規制庁で開催された、 第89回特定原子力施設監視・評価検討会で、福島第一原発・現地規制事務所の小林所長のコメントの中に驚くべき報告があった。
 地震の影響についての東京電力の報告を受けてのコメントが続く中、下記のようなものであった。

3月10日に起こった身体汚染について申し上げます。  

3月10日にプロセス主建屋に立ち入ってた東京電力の社員が
身体汚染を起こしてます。
 ここで申し上げたいのは2点あって、
1点目はそういう場所にですね、当初2人でいく人が1人でいって、
結果として設定した計画線量をオーバーして道に迷ってしまったんですね。


建屋から出られなくなったと。

それで二時間くらいいて、助けを求めて出て。
結果として汚染をしてます


そういうことに至った背後要因を作業の背景を申し上げます。
3月2日にですね、
物揚げ場の排水路のモニタが警報出しましたので
堰き止めてその水をK2タンクの堰内に持っていきました。

その水を輸送する先がこのプロセス主建屋だったんですね。
それでこういう日常的ではないですね、作業というのが発生する中、
やはりリスクの抽出、あるいはこういう一人で行くところを、なぜ止められなかったか。

2月13日(地震)の因果関係というよりも
こういういろんな点検作業を起こっている中、
こういう日常とは違う作業が起こっている中の危機管理の甘さがあるんではないかと思います。

身体汚染に至っておりますので、これは十分しっかり検証してください。

東京電力も一日作業を止めて、この関連のところを点検をおこなっておりますけども、その結果も踏まえてですね、
私が申し上げてる足元でこういうことが起こらないようにしてもらいたいと思います。 

 この報告を聞いて、筆者は大変、驚き、そして様々な謎がとけた。
3月10日、内部被ばくの事故があり、それが3月11日の会見で説明されたが、不可解な点がたくさんあったのだ。

3/11の東電会見での説明

 3/10の内部被ばくの事故を、東京電力は特に資料を作って説明せず、日報に掲載したものを口頭で説明しただけであった。

https://www.tepco.co.jp/press/report/2021/1583575_8989.html

【主な作業実績と至近の作業予定等】
・3月10日、プロセス主建屋で作業を行っていた当社社員が管理対象区域から退域する際、全身汚染していることを確認。鼻腔内の汚染検査を実施し、放射性物質の内部取込の可能性があると判断。
 状況は以下のとおり。
  ・判断時刻 午後7時20分
  ・作業内容 現場調査
  ・汚染状況 鼻腔内の汚染検査で汚染検出
        (約250cpm、なおB.G.約60cpm)
 当該社員については、除染により退域基準(4Bq/cm)未満を満足したため、管理対象区域を退域。
 なおホールボディカウンタ測定による内部取込の確認については、僅かな汚染が体表面に残っているため、同日行うことができないと判断し、後日行うこととした。
 また、入退域管理棟救急医療室の医師による問診の結果、異常なしと診断された。
 その後、当該社員について、体表面の僅かな残留汚染を除去し、ホールボディカウンタ測定を実施した結果、内部被ばく線量は記録レベル(2mSv)未満であった。
 入退域管理棟救急医療室の医師による問診の結果、異常なしと診断された。

https://www.tepco.co.jp/press/report/2021/1583575_8989.html
2021/3/11東電会見(撮影:おしどりケン)
東京会場に質問が移る頃は、福島会場には記者がほとんどいない!

筆者や他の記者が会見で質問し回答を得た情報は下記である。

・50代男性、福島第一での経験は震災後からで9年。
・装備はY(イエロー)装備
全面マスク、カバーオール、ゴム手二重、Y用単靴。

・ゴム手袋に汚染があった。汚染水の付着があった。

全面マスクとめがねが曇ってやむをえず汚染したゴム手袋でマスクと眼鏡の位置調整、その際に顔面をさわった

カバーオールが破れが1箇所。汚染が他の部位に伝播
右の太もも 約3cm×5cm


・預託線量 0.43mSv(γ:0.02mSv、β:0.41mSv)(内部被ばく)

・APD 0.33mSv (γ:0.33mSv、β:0.0mSv)(外部被ばく)

内部被ばく:預託線量 0.43mSv(γ:0.02mSv、β:0.41mSv)

 預託線量とは、放射性物質を体内に摂取したあと、その壊変によって放出される放射線の被ばくによる線量率を時間積分したものである。
 つまり、放射性物質を摂取後、50年でどれだけ内部被ばくするか、という値である。(未成年の場合は70年の時間積分になる)

 内部取り込みがあった場合は、鼻スミアをとる。
鼻の粘膜をぬぐい、そこにどれだけ放射性物質が付着しているか調べる。
そしてその核種の組成、β/γ比、α/γ比から、内部被ばく線量を推定する。
 またWBC(ホールボディカウンター)でも内部被ばくの測定をする。
 
 鼻スミアの値と、WBCの値とで預託線量を推定するのだ。

 しかし、3/11の会見で私は食い下がった。日報の次の一文が解せないのだ

ホールボディカウンタ測定による内部取込の確認については、
僅かな汚染が体表面に残っているため、
同日行うことができないと判断し、後日行うこととした。

https://www.tepco.co.jp/press/report/2021/1583575_8989.html

 翌日に内部被ばくの測定? 内部に取り込んだ放射性物質は尿などによっても排泄される。 翌日の測定でよいのか。

1時間かけて洗髪・除染して、退域基準(4Bq/cm2)以下にはなったが、髪の汚染がどうしても取れず、前髪とこめかみが2~3Bq/cm2であり、翌日にWBC測定したという。

いつ測定したか聞くと
「 本日(3/11)11時24分〜26分にWBCを受験し、記録レベル未満」
ということであった。

「記録レベル未満」の意味は、東京電力は2mSv以上の被ばくでないと記録に残さないという意味である。日本は法令上、記録レベルを規定していない。なので事業者によって1~2mSvの間で定めている。

補足:「記録レベル」というのは、健康に影響があるかないかというレベルではない。
ICRP(国際放射線防護委員会)が述べている個人モニタリングの記録レベルのことである。
個人モニタリング結果を、記録として保管することに合理的な意味を持つレベル、という意味である。

外部被ばく: APD 0.33mSv (γ:0.33mSv、β:0.0mSv)

APDとは alarm personal  dosemeter 、警報付き個人線量計である。
その日の計画被ばく線量(作業によって異なる)を設定し、そこに到達するまでに数回、警報が鳴る。5回鳴るように設定している場合は、3回鳴れば作業を途中やめ、汚染区域を退出するなど、計画線量を超えないための線量計である。

補足:APDは外部被ばく線量が計画線量に達しないようにするためのもので、個人の外部被ばく線量は、ガラスバッジで測定する。これは各個人が持ち、1ヶ月ごとに計測会社に送って、1ヶ月ごとの外部被ばく線量を測定する。

福島第一原発はβ核種(おもにストロンチウム90)による汚染が酷い。
なので、鼻スミアでの内部被ばく推定は、β核種による影響が大きいため
0.43mSv(γ:0.02mSv、β:0.41mSv
という値になる。

β線は近い距離しか飛ばないため、外部被ばくへの影響はγ線が大きくなる。
そのため、APDによる外部被ばく線量は
0.33mSv (γ:0.33mSv、β:0.0mSv)
という値になる。

タイベックが破れて右太腿が汚染??

タイベックは右太腿が約 3cm×5cm破れ、その付近に汚染があったという。タイベックが破れ、そして実際に身体まで汚染がある、放射性物質が付着することなど、そうそうない。

その汚染の度合いは、3/11の会見では出てこず、3/22の会見で筆者が再び質問した。

右太腿の汚染は、15Bq/cm2ということであった。

その他の汚染

どこに汚染があったか、詳細に質問した。以下である。

・最大 頭頂部 69Bq/cm2
・顔面の最大は顎 33Bq/cm2
・口ー鼻 15Bq/cm2
・左頬 22Bq/cm2
・右頬    30Bq/cm2
・額 22Bq/cm2
・右目 7Bq/cm2
・左目 5Bq/cm2

除染にどれくらいの時間がかかったか問うと、
「午後8時から9時過ぎまで。体を洗ったり洗髪した。頭の汚染の除染に時間がかかった」
とのことであった。

ふるまい教育は?

 東京電力は、ここ数年、ルール無視による身体汚染、内部被ばくが相次いでいる。原子力規制庁からもたびたび指摘を受けている。
 どのような対策をとっても改善せず、意識改革を、ということで2020年度から「放射線防護のふるまい教育」をおこなっている。
(それも情けない話ではあるが!)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2020/10/4-7.pdf

 高汚染している建屋の中で、全面マスクの中に、手を入れて鼻を掻き、内部被ばくをした事例も過去にはあった。それは福島第一原発に入って数日目の新人であった。

 事故前から従事している福島第一のベテランの作業員に聞くと、全面マスクをつけていて鼻がかゆくなった場合はコツがあるという。退域して装備を全て脱いで、というのではなく、近くに待機してある車まで戻り、表面の手袋を替え、ウェットティッシュでぬぐい、こっそり鼻を掻くのだという。
 また、曇りやすい眼鏡はもちろん、曇り止めを塗り、リークチェック(マスクの漏れがないか調べる)のときに、曇らないかもチェックするという。

 3/10に内部被ばくした東電社員は50代で福島第一の経験歴が9年というベテランである。ふるまい教育を受けていたのか、と問うと、受けていたとのことであった。

 ではなぜ、汚染区域で、全面マスクの中に手を入れる、眼鏡の曇りを取るような、そんな初歩的なミスが発生したのか?

放射線防護のふるまい教育を受けていたのに??

その謎が解けたのが、3/22の規制庁・監視評価検討会だったのだ。

2021/3/11東電会見(撮影:おしどりケン)

監視・評価検討会での東電・金子機械部長の返答

 再び3/22の監視・評価検討会に戻る。

 なぜベテランの東電社員が、初歩的な内部被ばく事故を起こしたのか、タイベックが破れたことにも気づかないほどだったのか、謎が解けた。

プロセス主建屋の中で迷い、出られなくなったのだ。
二時間くらい建屋の中で迷い、助けを求めていたのだ。
当初2人でいく計画が1人で行き、設定した計画線量をオーバーして、
内部被ばくをし、タイベックを破り身体汚染につながったのだ

 この小林所長の報告を聞き、筆者は涙が出た。
どんなに恐ろしかったことだろうか。
計画線量を超えたということはAPDの警報は、全て鳴ったということだ。
タイベックの破れに気付かなかったということは、パニックになっていたのではないだろうか。

小林所長の指摘に対して、東京電力・金子機械部長の返答は以下である。

機械部金子のほうからお答えします。
ご指摘ごもっともでございます。

小林所長からご指摘いただきました現場でのこの物揚げ場に溜まった水をタンクエリアの方へ上げて、その水をプロセス主建屋のほうに流して
一日でも早くタンクエリアにたまった水を雨水として処理したく焦ってたもので、
こちらその2人で行くということはこちら、われわれ照明が暗く、ことは確認しておりましたんで2人で行動させるつもりでございましたが、
目的の達成を優先いたしまして、人身安全を第一に考えた行動にうつせなかった
リスクを抽出できなかった、ということに弱点を感じております

今後、このようなことがないように、しっかりと安全が確保できていることを確認した上で必ず2人行動をさせると。
危険なところには2人行動で行かせることをルール化したいと思います。
(原文ママ、書き起こし)

これを受けて監視・評価検討会に外部専門家として参加している蜂須賀会長( 大熊町商工会 会長)はこう発言した。

今回やはり前回も、2人で行かなければならないところを1人でいったための事故、
今回も小林さんからの説明でやはり2人で行かなければならなかったことを1人で行ったためのかなりの重大の事故があったっていうことに対 して、すごい憤りを感じました。

 蜂須賀会長は、監視・評価検討会に初期から参加している。
2人で行う作業を1人で行ったための漏えい、事故、不具合、
原発事故後の10年で、私も何度も見ている。

>危険なところには2人行動で行かせることをルール化したい
と東電は回答したが、毎回、このようなことを繰り返すのみである。

3/22の東電会見は「話せる状況ではない」

3/22の東京電力会見で、
建屋内に2時間迷って、タイベックが破れ内部被ばく事故につながったのか、
一日作業をとめて、この事故を検証したというのはどういうことをしたのか
何月何日に作業を止めたのか、
なぜ、3/11の会見で、規制庁・小林所長が報告したことを自ら東京電力は説明しないのか、など、様々質問したが

「情報がまとまっていないので、話せる状況ではない。」

を繰り返すのみで、新たな説明は何も無かった。

ではなぜ、規制庁・検討会で東電金子部長は説明したのか?

「金子部長はこの件の直属のトップで、情報を把握しているのだろう。
私は(会見者)この件に関する情報は、持っていない」

 3/10の内部被ばく事故を、3/11の会見で説明があったが、それは重要な情報が抜け落ちているものであった。

 3/22の規制庁の小林所長の報告が無ければ、東電は説明しないまま、終わらせるつもりだったように感じる。

 原発事故が続いて10年、2021年3月11日の記者会見は、福島会場から、なぜ10年目の3/11に、東電・小早川社長は福島を訪問しないのか、コロナを理由にするが、オンラインでも取材を拒否したのはなぜか、という厳しい質問が続いた。

 しかし、それだけではなく、2021年3月11日の会見で報告された内部被ばくの事故は、重要な説明、経緯が隠されていた。

現地で作業に従事する方々の労働安全も守られない、
そして情報公開もされない、
という会見が、原発事故が続いて10年目の実態だったのだ。

 ちなみに3/22の東電会見では、規制庁・検討会で発覚した内部被ばく事故について質問したのは、東洋経済・岡田記者と、筆者だけである。

 原子力規制庁に常駐して、東電会見に出席している大手メディアの方々はなぜ質問されなかったのだろうか。

 関心が薄れ、監視が少なくなると、知らないうちに酷い状況になっていく。
関心を持つこと、監視の目を増やすことは、現場の方々の安全を守り、そして私たち自身を守ることになる。

この内部被ばく事故の経緯が明らかになること、
このようなことが二度と繰り返されないこと、
そのために関心を持つ人、監視の目が増え、
東京電力は情報公開を迅速におこない、人身第一の労働安全が常に担保されることを筆者は心から望む。

2021/3/22東電会見における筆者(撮影:おしどりケン)

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