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こどけん通信2020年6月夏号より転載(許可を頂きました)

こどけん通信  http://kodomotatinomirai.livedoor.blog/

 おしどりは「こどけん通信」で昨年から連載をしています。
 「こどけん」とは「こどもだちの健康と未来を守るプロジェクト」
原発事故後、福島を中心に、お母さんたちのサロンや勉強会・座談会、健康相談会や保養活動などをされてこられました。2016年からは情報誌「こどけん通信」を季刊で発行されています。

↓「こどけん」についてもっと知りたい方はこちら!↓
http://kodomotatinomirai.livedoor.blog/  

第4回知りたがりの怒りんぼに笑いながらなろう!

ALPS処理水、コロナ禍の中で最後の「ご意見を伺う場」!?
「致死量に満たない毒入りリンゴだから安心と言われて食べますか?」

花を贈る社会と 石を投げる社会

 新型コロナ! の影響はみなさんいかがですか? 生活が突然ガラッと変わることは、私は阪神・淡路大震災や、東日本大震災からの原発事故で経験しているけれど、何度経験しても慣れないし、平常時にもっとこうしておけば良かった! &してほしかった! はいっぱいあります。

 原発事故と並行して、コロナ禍の取材もしていて、WHOにメディア登録したり、世界のニュースも追っていますが、原発事故との違いは「世界中が当事者になったこと」かなぁ。そんで、原発事故は日本でおこったことだから、他国だったらどういう対応をとるんだろうか、他国の批判はするけど自国で原発事故がおこったら案外うまくいかないんじゃないの? と思ってましたが……違った! 日本の原発事故後、いちはやく大きく政策を変えたドイツは、新型コロナの問題でも、いちはやく良い政策をとり、国民に説明し、国民はその政策を支持し、新型コロナという「世界一斉民主主義テスト」で、一番良い成績を納めていると思います。

 そして、政策だけでなく、国民の違い! 日本は、他県ナンバーの車が傷つけられたり、帰省して感染者を出した家は村八分に合ったりと……感染を隠す、できるだけ黙っておく、という状況です。ところがBBCなどで欧米のニュースを見ると、家のドアに「新型コロナウィルスの可能性があるので、2週間の自主隔離をしています!」と張り紙があるのに通りがかった人が気付いて、「がんばってね!」「パンと水をおいておきます!」「チョコレートをどうぞ」「お花をおいておきます」などなど、エールや贈り物が増えるというのです。なんなの、この違い! 

 ドイツの国際会議に毎年行って、原発事故の発表をしていたとき「日本は福島から避難してきた子どもをいじめる、というニュースを見たけど、なぜ? 意味がわからん!」としきりに言われたけど、そうか、やっぱり根底から違うんだな、と改めて思った次第。けど、まぁこの日本人の距離の取り方が、感染拡大防止に役だったとも言われていて……でもそんな、お花を贈るのではなく石を投げる社会、イヤっす!!

自粛することなく進む原発問題

 そして、コロナ禍で大変なときでも、粛々と原発事故の問題は進められています。まず、原発事故を起こした東京電力が、新潟県の柏崎刈羽原発を再稼働しようとしていること、そして青森県に東通原発を新規建設しようとしていること! その計画がどんどん進んでいます。また、茨城県の東海第二原発、これは東京電力ではなく、日本原電が所有しているんだけど、独自に再稼働のための追加工事の資金を調達することができず、そのほとんどを東京電力が資金提供しようとしています。なんでや! まだ原発事故が続いているのに、再稼働や、新規建設や、他社の原発の再稼働への資金提供ってどういうこと!?

 それだけではなく、このコロナ禍で、全国で、いや世界中で、感染拡大防止のため人の集まりを避けよう、今は自粛をしよう、となっているとき、福島第一原発のタンクにたまってるALPS処理水に関する「ご意見を伺う場」が開催されました。
(注:この記事を書いているときは5月、日本全国が緊急事態宣言中でした)

 2013年からの「トリチウム水タスクフォース」、2016年からの「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」、そして2018年の3か所での「公聴会」を取材してきた私にとって、最後の「ご意見を伺う場」を、このコロナ禍の中で強引にやっちゃうの!? と驚きました。傍聴無し、取材も無し。(コロナだからと取材は断られました)

 人がいない中、福島のホテルの広い会議室から、東京の副大臣を写すスクリーンに向かって「ご意見」を伝えるだけ。しかも、部屋に人がたくさん入らないよう、1人ずつ。それを、web中継で流すだけ。
 全世界どこでも見られる生中継だけれど、その経産省の中継を見ているのは数十人でした。だって、どこも新型コロナで大変だもの!

経産省のYouTubeチャンネルより
「関係者のご意見を伺う場」第二回

 福島で2回(4/6、4/13)東京で1回(5/11)おこなわれた「ご意見を伺う場」、(注:記事執筆後、後2回開催されました)一応、私は全部視聴しました。はーん、こんな人目につかない時期に、こっそりやっちゃってさ、どうせアリバイ作りで、経産省が選んだ人に喋らせるだけでしょ、ふん! と思いながら。

 でも、第一回の4月6日のお一人目の意見発表を聞きながら、私は慌てて書き起こしはじめ、そして泣きました。それは福島県旅館ホテル生活衛生同業組合、理事長の小井戸英典さんの意見発表です。

「わたしたち福島県内の旅館ホテル業界は、原発事故に起因する放射能拡散の実害により、いまだに大きなダメージを受けております。これは実態がない事象を感情的に忌み嫌うことがから発生する『風評被害』などでは断じてございません。放射能という人体に害のある物質が空気中に拡散し、土壌などに蓄積した物理的事象に怯え、忌避する人間の本能に由来するものであると、我々は当初から考えております」

と、冒頭から、風評被害ではなくて実害だ、と訴えられたのです。

メディアが伝えない「風評ではなく実害」「道義的な責任」

「致死量に満たない毒入りリンゴだから食べても安心だと言われても、食指が動く者はほぼ居ないであろうことは、容易に想像ができるでしょう」

と、政府がおこなう「風評被害対策」は的外れなのだ、とも訴えられます。
 そして「処理水」の報告書を見ても、

「いずれにしろ福島県内に放出または投棄することを結果として想定しているようでございます。そうであるならば、その処理水にはトリチウムなどの放射性物質が含まれていることは事実であることから、この処理をする期間にもたらされる損失は、風評被害ではなく、故意の加害行為による損害であると我々は認識するところです」

 「処理水放出」は、故意の汚染水投棄で、加害行為だと。この小井戸理事長の言葉は、もっとたくさんの方々が聞くべきだよ!

「国はこの事実を認め、不法であるか否かを争うことを放棄し、妥当な範囲の損害、損失の補填を速やかに、処理水の全期間にわたって講じることを求めます。この件に関して、個別の争いに持ち込まれた場合は体力のない事業所にとって事実上の破産命令となりかねません。この方針が定められることを期待した上で、処理水の具体的な方法について意見を述べます」

と続きます。

「原発事故による被害が収束していない福島県内の状況下で、さらに放射能をまき散らす行為につていはとうてい許容できるものではない、いうのが当業界の大勢を占める意見です」

 そして、昨年10月に大阪の松井市長が、大阪湾での処理水放出受け入れを表明し、吉村大阪府知事が同調した事例の話をあげられます。なぜ処分が福島ありきで進められるのか、受け入れ先を丁寧に探すのも国の責務ではないのか、と問われます。
 けれど……

「俯瞰してこの様子を見ますれば、福島の不要なものを他所に押し付ける行為だと感じられるもので、福島県外の世論からすると、福島の評価を下げる行為であるとも感じます。旅館ホテルは全ての都道府県に存するものであり、福島のつらさを他所に押し付けることは信義に反します。よって、処理水については、至極残念ではございますが、福島県内において処分するのが最も道義的な選択ではないかと思慮いたします。」

と諦めのようなことをおっしゃいます。そして最後にまた、

「繰り返しになりますが、この海洋放出による直接的な影響は、風評被害ではなく実害であり、それはその処分が終了するまで続くものになります。国は、しっかりと個別に意見を聞き、補償などの対応を厳にとっていただくよう重ねてお願いするものです」

と終わります。

経産省のYouTubeチャンネルより
福島県旅館ホテル生活衛生同業組合、理事長の小井戸英典さん

 小井戸理事長の悲しい決意、風評被害ではなく実害だと、海洋投棄は故意の加害行為だと、でも福島がイヤなものを他所に押し付けることにもいかない、という言葉に、涙でっぱなしで書き起こしました。このスピーチが、傍聴も取材も無いところなんて!

 なのにさ! その夜のTVニュースでは「補償があれば海洋放出受け入れ」のテロップとともに、この小井戸理事長の顔が映し出されていました。くっそ! 何きいててん! なんでそんな報じ方すんねん!

「議事録がない」ことは何を意味するか

 ニュースの元になっている「一次情報」は何か、というのは本当に重要なことです。流れてくる断片的なことだけが、全てではない、歪められてる可能性もあると感じながら、情報に接し、自分の頭でものを考えること。非常時も、通常時も、それが大切なことだと思います。

 新型コロナの問題では、政府に提言してた「専門家会議」が議事概要すら公開されていなかったので、2月25日という誰よりも早い時期に情報開示請求をし、内閣官房とめちゃケンカをして、速記業者の納品物を開示させることに成功し、まっ黒くろすけの議事録を手に入れました。その後、だんだん他のメディアも専門家会議の議事録が無いという問題を取材してくれています。

 議事概要があればいいのではなく、誰のどういう意見があり、どんな議論があり、合意形成されたのか。誰の意見が無くなり、誰の意見が採用され、どの意見に誰が賛成し、反対したのか。それが議事録だし、結論だけでなく、それに触れて改めて、私たちは考えることや検証ができるのです。

 思えば、原発事故後の福島県県民健康調査検討委員会も、第1回から3回までは非公開でやっていて、それに私はめちゃくちゃ抗議して、第4回から傍聴・取材を受け付けてもらいました。まぁ表向きに台本ありきの委員会になったのだけれど。けどね、どこでどういう方々が、議論して判断しているか、可視化するのは大切。誰かがまとめた結論だけではダメなの。小井戸さんの悲しい覚悟が全く無視された、タンクの処理水のニュースに触れただけでは、まったくの情報不足で、その後の思考や議論に時間をかけたとしても意味はないの。

 めんどくさいけれど、このあとの世代のために、石を投げるのではなくお花を贈る社会を作るために、民主主義が成熟するための情報を残していくことは、とても重要なことだと私は思っています。知りたがり、募集中!!

おまけ

 記事中に言及した、専門家会議の速記録まっくろくろすけの記事はこちら!

「ALPS処理水」に関して、私がまとめた過去の記事はこちら!
これだけ抑えておいたら、あなたはもう、元原発事故担当大臣より詳しくなるよ!

そして7月31日は、「ALPS処理水」に関するパブリックコメントの最終期限です。
メールでも郵送でもFAXでも。郵送は必着、とありますが消印有効です。
メールの宛先は  takakushu-iken@meti.go.jp です。
詳しくは下記! 
小井戸さんの悲しい覚悟を受け取り、未来に花を贈りましょう!!

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/index.html

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