3行まとめ
・Jヴィレッジの除染土の再利用先は「関係者に迷惑がかかる」と絶対に回答しない東京電力。→「関係者」とは?
・環境省は「除染計画ではなく民間の工事なので、特措法では関知しない」
・厚労省は「除染計画であろうが民間の工事であろうが、除染は除染、除染電離則は適用される」
関西弁まとめ
2月からずっと追っているJヴィレッジの汚染の問題、いろいろな事実が出てきて、やっと次々とメディアが記事にしてくれだした、いぇい!
ほんまに問題山積みで、なんでこんな問題が出てきたかの全貌がだんだんわかってきたわ!
東京電力「Jヴィレッジは『原状回復工事』やねん。除染ちゃうねん」
→そんなことってあんの?
ここから厚労省と環境省に掘り下げていったら、すごい事実がわかってん。
東電の言い分にビックリの厚労省。
「どんな工事件名であろうと、線量を下げる作業は除染やん。当たり前やん」
→本来、除染電離則が適用される作業を、東京電力はぶっちぎって違反してる可能性大。今、労基署が調査中。
(ちなみに私が最初に厚労省にこの問題を報告してん。
ていうか、除染電離則ってそんなんでいいの? って確認したら、
厚労省も労基署も「そんなわけあるかい、ほんまに東電はそんなこと言うてんの?」という運びになってん)
グルのような環境省。
Jヴィレッジは、ほんまは『除染特別地域』で、国の除染計画、つまり環境省が除染せなあかんとこやねん。
でも、Jヴィレッジは、福島第一の収束作業で、東京電力がずっと使っててん。だから、環境省の除染計画のときに、できへんかって。
環境省「ほんまは環境省が除染せなあかんとこやけど、できへんかったから、その後に、東京電力が『原状回復工事』をして線量低減してん。
せやから、民間の作業になってんな。
環境省の除染やったら、除染土は濃度別に管理して、再利用する場合もモニタリングとかするけど、これは環境省の管轄からはずれて民間の工事になったから、環境省は関係あらへんねん」
うそやん! そんなんが通るんやったら、汚染対処特措法なんて、めっちゃ穴だらけやん!!
ーーで、結局、再利用した除染土の濃度と、利用先は?
東京電力「関係者に迷惑かかるから言わへん」
ーー関係者ってどこ?
東京電力「それも言わへん」
ーー環境省はそれでええの? 中間貯蔵施設に運び込まれた除染土の再生利用はもっと厳格やん。
環境省「知らん。だって環境省の案件とちゃうもん。」
厚労省だけ「いや、環境省の計画であろうが、民間の工事であろうが、除染は除染やろ。除染電離則を適用して、作業員をちゃんと守ってや。」
Jヴィレッジは過去にプルトニウム検出
なんで、Jヴィレッジの除染&汚染を私が気にするかというと。
Jヴィレッジって、事故直後、東電の収束作業の拠点になる前は、国が使っててん。
自衛隊のヘリコプターの発着場所、ヘリの機体や自衛隊員の除染場所やってん。その後、消防や警察の前線拠点にもなんねん。
原発爆発直後の上空を飛んでいたヘリコプターを水で洗い流した場所がJヴィレッジやねんな。
その後、放医研の調査で、Jヴィレッジからプルトニウムが検出されたりもしてん。
だから、Jヴィレッジは、他の場所と違い、局所的に高濃度汚染がある可能性が高いし、セシウムだけでなく、いろんな核種を分析したほうが良いと思ってる。
なので、除染土の再利用も少し慎重になったほうがいいし、Jヴィレッジの高濃度の廃棄物118m3もどこの保管してるか、どんな濃度が、東京電力は「関係者に迷惑がかかるから言わん」とばっかり言うねんけど
関係者は、福島の方々で、情報が非公開なことで、迷惑をこうむるのは、福島の方々やと思うねんな。
(以上、関西弁まとめ)
Jヴィレッジ「除染土、再利用」の問題が次々メディアに
筆者が2月から追っているJヴィレッジの汚染の問題に関して、次々と問題点が明らかになってきた。
そのうちの1つ、除染土51,000m3をいつのまにか再利用し、その濃度も再利用先も明らかにしていない問題は、次々とメディアが取り上げるところとなった。
6/18付け、筆者の記事
6/21付け福島民報の記事
同6/21付け東京新聞の記事
(6/21付け、東京新聞と福島民報の記事がほぼ同じ内容なのは、共同通信の配信記事だからである)
6/24付け、毎日新聞の記事
福島第1原発事故 Jヴィレッジ除染土、再利用 5万立方メートル 東電、土地造成に /福島
https://mainichi.jp/articles/20200624/ddl/k07/040/060000c
そもそもの発端は、昨年10月のグリーンピースの測定である。聖火リレーのスタート地点であったJヴィレッジの空間線量が高かった地点を指摘した。
その後、筆者が2月に、空間線量ではなく、具体的な土壌濃度はいくつだったのか、東京電力を追究取材し、1kg中100万ベクレルを超えていたという測定を東京電力がおこなっていたことを引き出した。
いったい、Jヴィレッジの除染はどうなっていたのか。
そこを追究していくと、奇妙な事実が出てきたのである。
東京電力は「除染ではない、線量低減の『現状回復工事』をした。
除染ではなく、工事なのだ」と強弁するのだ。
除染ではない? 除染電離則の適用はどうなっているのか?
作業員の線量管理、健康診断、放射線教育など、作業に従事した方々は守られたのか?
東京電力「環境省のガイドラインに従った。除染ではない」を繰り返す東京電力。
結局、除染電離則にはのっとっておらず、作業員のべ4万1千人の線量管理をおこなっていないことを回答した。
2020/6/18 原発ゼロの会第240回会合
衆議院第二議員会館にて、この問題に関して、国会議員らが東京電力、環境省、厚労省を呼び、事前質問の回答と説明を求める会があった。
(そのときの中継動画は下記である)
https://twitcasting.tv/makomelo/movie/622914039
厚労省「どんな作業件名でも、線量低減は除染。除染電離則は適用されるべき」
東京電力のおこなった「原状回復工事」は、除染ではないので、除染電離則は適用されないのか。その問いに対しての回答は明確であった。
厚労省、夏井智殻氏は「作業件名が何であろうと、除染特別地域内での線量低減の工事は、除染です。除染電離則は適用されます」と繰り返した。
具体的に今回の工事が適用されるかどうかとなると、個々の事案には答えられない、となる。(ちなみにこれは、労基署や警察署が違反案件を一つ一つ公開しないことと同義である)
実は、この厚労省、夏井氏こそ、筆者が最初に電話でJヴィレッジ除染の案件に関して、除染電離則の適用の解釈を取材した方であった。
電話ごしに東京電力のホームページから当該の資料のありかを伝え、
「表面土壌や芝生の撤去、高圧洗浄やアスファルトの敷き直し等を行っており、除染と同等の線量低減効果があります」
という文章とともに
「被ばく線量管理を行う水準になかったことから、線量管理は必要ないことを確認しております」
という一文を説明すると、夏井氏は「あー…」と声をあげたことを筆者は忘れられない。
「東京電力は、原状回復工事なので除染ではないので、除染電離則適用ではないと言っているのですか、そんなことを言っているのですか」と。
そして筆者は、福島県にJヴィレッジの原状回復工事の詳細を情報開示請求し、手に入れた資料を、労基署に情報提供をする約束をした。
環境省「国の除染計画ではないんで。民間の工事なんで。環境省は知りません」
さて、厚労省の対応と異なり、酷いのは環境省だ。
Jヴィレッジの除染に関して、環境省がおこなったものは、中間貯蔵施設に運搬し、保管しているという。
しかし、東京電力の行った「原状回復工事」は、民間企業のものなので、環境省は関知するところではない、と何度も説明を繰り返すのだ。
では、なぜ、Jヴィレッジの除染が環境省の除染計画から外れたか。
それは、Jヴィレッジを、東京電力が収束作業の拠点として使用してたからである!
本来なら、環境省の除染計画に組み込まれるべきところを、収束拠点だったため、その後、東京電力が「除染」しただけなのだ!
それなのに、「民間の工事なので、環境省の除染計画ではないので、除染土の再利用など環境省の関知するところではない」と説明するのは、おかしくないだろうか?
【2013/11-2016/3】 環境省の除染計画
(当時東京電力が使用中であったため除染が不可能だった場所を除く)
【2016/4-2018/6】東京電力の「原状回復工事」
A:特措法上、楢葉町の除染事業は国の役割。Jヴィレッジも環境省が実施。
Jヴィレッジで弊社がしたのは除染ではなく「原状回復工事」
特措法上の除去土壌には当たらない。
除染土の再利用「関係者に迷惑がかかるので回答を差し控える」
特措法上では、中間貯蔵施設に運搬・保管された除染土は、再利用される場合、濃度や利用先などは公開され、定期的なモニタリングも実施される。
しかし。
東京電力だけではなく、環境省も「これは特措法上の除染計画には当たらないので、民間の工事なので、特措法上の除去土壌にはあたらない」として
濃度も再利用先も非公表なのである。
前述したとおり、本来なら除染計画に係る地域なのだが、原発事故の収束拠点となっていたため、環境省が除染しなかったという話なのに!
そして会見でも、何度質問しても「関係者に迷惑がかかる」と、除染土の利用先は回答しない。
8000Bq/kgを超えた118m3の廃棄物はどこにあるのか、どんな濃度か
また、東京電力が頑なに回答しないのが、再利用しておらず、また産廃業者にも出していない、高濃度の廃棄物である。
いったいどんな濃度だったのか? 103万Bq/kgの高濃度のものがあったことを考えると、同等のものがあったとしても不思議ではない。
また、高濃度の118m3の廃棄物は、防球ネットやテニスコートマットだという。
テニスコート! 筆者は、そこが原発事故直後の除染場所として使われていたことを取材して把握している。消防庁の資料にも書かれている。
自衛隊のヘリの発着・除染
2011年の事故直後、陸上自衛隊のヘリコプターの発着・放射性物質の除染をおこなっていたのもJヴィレッジであった。
以下は筆者が、2016年の防衛装庁に情報開示請求して引き出した、事故直後の自衛隊員の資料の一部である。
Jヴィレッジから飛び立ち、戻ってきて、そしてJヴィレッジで放射性物質を洗い流していたのだ。
高汚染のテニスコートマットなど118m3というのは、いったいどんな濃度で、どこに保管されているのだろうか?
(「関係者に迷惑がかかる」という理由で、東京電力は回答しない)
Jヴィレッジからプルトニウム検出
2012年の発表で、Jヴィレッジからはプルトニウム241も検出されたことが報告されている。
放射線医学総合研究所などのグループが東京電力福島第一原発から20~30キロ付近の土壌からプルトニウム241を検出した。この核種は半減期が14.4年であることなどから、1960年代を中心に行われた大気圏内での核実験ではなく、昨年の事故で原発の原子炉から放出されたと考えられるという。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201203080724.html
浪江町と飯舘村の落葉の層から1キロあたりそれぞれ34.8ベクレルと20.2ベクレル、Jヴィレッジの表土から1キロ当たり4.52ベクレルのプルトニウム241を検出した。
記事の元の調査研究は下記である。
https://www.nature.com/articles/srep00304
環境省の除染計画から外れたから、と民間にまかせ、特措法の適用外だという説明は妥当だろうか?
作業員はきちんと放射線防護されるべきだし、除染土の再利用や、高濃度廃棄物の保管など「関係者に迷惑がかかる」ではなく、説明責任があるのではないだろうか。
まとめ
Jヴィレッジは、本来、聖火リレーのスタート地点であった。
しかし、このような問題がたくさん隠されていた。
Jヴィレッジはそもそも、東京電力が原発立地自治体の「地域振興のため」に寄付した施設である。通常のスポーツ施設というより、原子力立地への便宜の意味合いが強い。
そのような経緯もあって、Jヴィレッジの除染の様々な問題が隠されてしまったようにも感じる。
これが、一般のスポーツ施設だったら、東京電力から原発立地自治体への寄付施設でなかったら、事故の収束拠点でなく環境省の除染計画に普通に入っていたら、このような問題は生じなかったのではないだろうか。
しかし、環境省が「Jヴィレッジは除染計画に入らず、特措法の範囲外」という解釈をしているのは、問題があるように思う。
厚労省は「除染計画の範囲であろうがなかろうが、民間であろうがなかろうが、線量低減の作業は、一律に除染で、除染電離則を適用」としている。
工事前に除染電離則にのっとって、作業員の線量管理や健康診断、放射線教育をおこなっていないのは、確信犯のような感もある。
現状、労基署がどういう判断をするか、という状況である。
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