3行まとめ
・Jヴィレッジは除染していない「原状回復工事」であると主張する東京電力。なので除染電離則を適用せず、作業員の線量管理などをおこなっていない。
・8,000Bq/kg以下だから、と51,000m3もの「除去」土壌をいつの間にか再生利用したとのこと。
濃度と再生利用先は「関係者に迷惑がかかる」という理由で非公表。
・8,000Bq/kgを超えた118m3の汚染廃棄物の保管場所も非公表。
関西弁まとめ
※なぜ「関西弁まとめ」を書くかについて※
原発事故の取材を通して、会見で同じ情報に接しても、
記者が女性か男性か、若いか年配か、理系か文系か、原発推進か反対か、どの政党を支持しているか、など様々な要素で印象が異なる記事・文章になるということに気付きます。当たり前なのですが。
つまり、誰かの記事、「要約」はその人のフィルターを通した「意訳」でもあります。
要約=意訳を読んだだけで、それが事実の全貌と思っては危険ということを感じてほしいので、まとめを関西弁で書いております。
これは、私の取材、要約=意訳。
事実の全貌ではなく、私の目から見た事実、ある側面でしかありません。
標準語で整えて書いてあっても、どんな記事でも「誰かの取材、要約=意訳」なのだと気付いてほしいのです。
常に、意訳ではない一次情報までたどれたらいいのですが、それは時間と手間がかかりすぎ、無理なことです。
ですので誰かが要約してくれたもので済ませますが、でもそれは誰かの意訳なのだと、それが全貌ではないのだと、歪められてるものかもしれないのだと、 常に意識しながら、情報を摂取することがとても重要だと思います。
と、いうようなことを感じて頂きたいので、関西弁まとめを書いております。
全ての記者が、自分の方言で書けば、記事は誰かの要約・意訳なのだということが実感できるのではと思います。
と、いうわけで、「関西弁まとめ」です!
Jヴィレッジ「除染」には疑惑がいっぱい!
福島県の「Jヴィレッジ」、聖火リレーのスタート地点やったけど、
どうも、除染や計画がいい加減やったみたい。
「復興オリンピック」の象徴やったのに、間に合わせるために、急いで工事していろんなことをウヤムヤにしたみたい。
※「Jヴィレッジ」とは、福島県の楢葉町と広野町にまたがるサッカースタジアム。2011年の原発事故のあと、自衛隊などが放射性物質を除去するための除染場所となり、その後、線量が高すぎる福島第一原発に待機場所を作るのは難しいので、Jヴィレッジを収束作業の前線基地とし、砂利を撒いたり、鉄板を敷いたりして、駐車場にしたり、寝泊りするプレハブを建てたり資材置き場になってました。
ウヤムヤその①「除染電離則は知らん!」
東京電力「うちは除染してない。原状回復工事!工事しただけ!
工事で線量低減しただけやから、除染ちゃう! (線量低減の工事を除染ていうんちゃうの?)
除染電離則は関係ないから守ってない! 作業員の線量管理はしてない!」
厚労省・労基署に確認すると
「アホな。そんなんやったら、除染しても『工事です!』って言い張ればいくらでも脱法できる。作業件名なんか意味ない、実際に何をしたかで判断。
除染特別地域で、線量を下げる作業して、高濃度の汚染廃棄物が出たなら、それは除染やろ。作業員の線量管理は必須やわな。」
ウヤムヤその②「8000Bq/kg以下のものはとっくに再生利用した、でも濃度と再生利用先は言わん!」
東京電力「Jヴィレッジの線量低減のための『原状回復工事』(それを除染て言うんちゃうの、て毎回思う)で、出た廃棄物は52,818m3。
そのうち、51,000m3は8000Bq/kg以下の土壌やってん。
だからもう、土地造成とかに再生利用した。」
ーーえ!? どんな濃度の土壌を、どこに再生利用したん?
東京電力「それは言わん」
ーーなんで? 中間貯蔵施設に運び込まれた汚染土壌を、8000Bq/kg以下の土壌を再生利用する計画をずっと議論してるけど、地元への説明や情報公開、モニタリングは必須ってなってるけど?
東京電力「でも言わん。関係者に迷惑がかかる」
ーー関係者って誰?
東京電力「それも言わん!」
ウヤムヤその③「高濃度のものをどこに仮置きしてるかも言わん!」
ーー8000Bq/kgを超えた廃棄物はどれくらい?
東京電力「118m3あったわ」
ーーそれ、どこで保管してるん?
東京電力「それは言わん」
ーーえ? 前はこの工事の関連の、楢葉町の町営駐車場の100万Bq/kgを超えたものは福島第二に置いてる、ってすぐに回答してくれたやん。
東京電力「まぁ前は説明したけど。これがどこにあるかは言わん。」
いや…原発事故を起こしたのは東京電力で、
なんでそんなに強気なの??
もう、原発事故にみな関心が無くなったとみて、好き勝手やるの??
103万ベクレル/kgの汚染土壌が今年2月に発覚
筆者はJヴィレッジの汚染について、追求していたが、今年2月13日の会見後のぶら下がりにて、東電広報から情報を入手する。
以下が記事である。
そして、筆者が記事を書いた後に、環境省にその数字がメールにて報告される。(つまり、東京電力は、測定後の報告を迅速に環境省にしていない)
筆者の記事の1ヶ月後、3月26日にプレスリリース
筆者は、東京電力の記者会見にて、なぜ測定値を正式に公表しないのか、会見後の口頭説明ではなく、資料配布を要求し続けた。
その結果、2月16日の聖火リレーのスタート地点の汚染は100万ベクレル/kgを超えていた(東電測定) の記事の後、3月26日の記者会見で資料が配布された。
この資料が出された3月26日は、くしくも、Jヴィレッジが聖火リレーのグランドスタートとなる日であった。新型コロナウィルスのため、今年の「復興」オリンピックが無くなり、そのため、Jヴィレッジ汚染の情報が多少、出てきやすくなったのでは、と筆者は想像する。
東京電力「2.5μSv/h以下なので線量管理はしていない」
3月の時点で、東京電力が会見で「除染ガイドラインにのっとって、特定線量下業務の毎時2.5マイクロシーベルトを超えていないので、作業員の線量管理は必要なかった」と説明をする。
これを聞き、筆者は非常に驚いた。
2011年から取材を続けている筆者は、除染電離則や除染ガイドラインの作成にかかる審議会から取材を続けている。
除染電離則や除染ガイドラインに対して、そのような理解は間違っている、と指摘し、厚労省や労基署に確認した。
楢葉町、広野町などの除染特別地域で、線量低減の工事、すなわち除染作業は全て除染電離則にのっとっておこなわれる。
毎時2.5マイクロシーベルト以下の除染作業で免除されるのは、内部被ばくの測定で、個々の外部被ばくの線量管理、状況に応じて、作業の代表者の外部被ばくの測定で代用できるという内容で、「線量管理が必要ない」という解釈は間違っている。
何度か厚労省、富岡町の労基署に確認したが、両方とも
「東京電力の工事の中身の詳細を把握しておらず、個々の事例についてのコメントはできないが、除染電離則の理解はあなたの理解で合っている」とのことだった。
筆者が過去に熟読した、除染電離則とガイドラインにまつわる厚労省の資料も添付しておく。
Q5: 仮に、除染計画には入っていない除染等業務が行われる場合でも、放射性物質汚染対処特措法の対象地域で行われる除染作業である以上、「除染電離則」の適用があるものと考えてよいか。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000030870.pdf
A5: 除染電離則は、除染特別地域等内における除染等業務又は特定線量下業務を行う事業の事業者に適用される。
A6: 「汚染状況重点調査地域」において除染等業務を行う場合は、 0.23μ Sv/h以下の地域でも、除染電離則及びガイドラインが適用 となる。
A6: 除染類似作業については、特定汚染土壌等取扱業務として法令の適用を受ける。法令の適用を受けないが、ガイドラインの適用を受ける作業としては、除染等事業者以外の者が自社の施設で行う除染作業、除染特別地域等の外で実施する除染等の作業 又は廃棄物収集等の作業がある。
ttps://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000030870.pdf
A58: 除染等業務を行う場合は、作業場所の平均空間線量率に関わ らず雇入れ時又は当該業務に配置換えの際の特殊健康診断を 実施しなければならない。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000030870.pdf
3月の会見で、東京電力の除染電離則の解釈は間違っているのではないか、労基署に確認したのか、と筆者は質問した。
そして、福島県に工事の詳細を情報開示請求したり、東京電力の会見で追及を続けていた。
しかし、東京電力は、質問の回答を、記者会見ではなく、会見後に、立ち話で説明したい、と提案してきた。
この問題を追究している、東洋経済新報の岡田記者と、筆者にだけ、会見後に、立ち話で回答したいというのだ。
筆者と、岡田記者はその提案はもちろん断り、会見で質問しているのだから、会見で回答するように求めた。
すると、1ヶ月ほど経ってから、5月に突然、資料が配られ、説明があった。
(しかし、会見内ではなく、いったん会見を終了させてから、会見後の別枠の説明という形式であった)
「線量管理は必要ない」と再び明言、なのに追求すると「労基署に確認する」
5月18日に配布された資料は以下である。
苦しい言い訳の羅列で興味深い資料である。
・当社の実施した「原状回復工事」は、「除染」と同等の線量低減措置の実施も含め、もとの状態にして お返しするための工事です。
https://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2020/1h/rf_20200518_1.pdf
・「原状回復工事」は、除染関係ガイドラインに則ることを求められておりませんが、同ガイドラインに記載され ている内容と線量低減の観点で同等かそれ以上の水準の除染方法にて実施しました。
・具体的には、表面土壌や芝生の撤去、高圧洗浄やアスファルトの敷き直し等を行っており「除染」と同等の 線量低減効果があります。
除染ではない、「原状回復工事」なのだ、除染ではないから除染電離則にのっとらなくていいのだ、という東京電力の主張であるが、
除染と同等の線量低減の「原状回復工事」、表面土壌や芝生の撤去、高圧洗浄やアスファルトを剥がしての敷き直しなど、それを「除染」と呼ぶのではないだろうか?
被ばく線量管理を行う水準になかったことから(必要でなかったことから)線量管理は必要ないことを確認しております。
https://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2020/1h/rf_20200518_1.pdf
そして、被ばく線量管理を行う水準にはないので、線量管理は必要ない、と明言している。
楢葉町、広野町という除染特別地域でおこなった線量低減の作業は、計画外の除染類似作業でも、毎時2.5マイクロシーベルト以下でも、法令の適用を受けるのだ、労基署に確認した上で、この文言を記載したのか、と改めて筆者は質問した。
すると、なんと「改めて労基署に確認する」となり、現在6月18日時点でも回答はまだない。
なぜ、そもそも2014年の工事計画の時点で、確認していないのか、今になって確認しているのか、と重ねて問うと「当時の状態を確認する」という回答である。
汚染土壌は「8000Bq/kg以下だから」といつの間にか再生利用
この「原状回復工事」で出た廃棄物は52,818m3である。
内訳は以下である。(記者会見での東京電力の回答)
土壌 | 51,000m3 | 8,000Bq/kg以下 | 土地造成に再生利用 (場所・濃度不明) |
アスファルト・コンクリートがら | 1,700m3 | 8,000Bq/kg以下 | 産業廃棄物として処分 (その先は不明) |
防球ネット、テニスコートマット | 118m3 | 8,000Bq/kgを超える | 保管場所は非公表 |
総量 | 52,818m3 |
問題はいくつもある。
再生利用をしたという土壌の濃度、再生利用先を東京電力は頑なに説明しない。「関係者に迷惑がかかる」というのだ。
その「関係者」とは何かと問うてもそれも答えない。
筆者は、環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」を何年も取材している。福島県内の除染で出た廃棄物を福島第一原発敷地周りの「中間貯蔵施設」に集め、8000Bq/kg以下の土壌を全国の自治体の公共事業などで再生利用していく計画である。
http://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/investigative_commission/
その実証試験をおこなっている段階だが、二本松市は住民の反対で受け入れず、また試験を受け入れた南相馬市でも、8,000Bq/kgは高すぎる、と3,000Bq/kgの実証試験をおこなったのである。
そもそも、原発事故前は、再生利用可能、規制から外れる値とされる「クリアランスレベル」は、セシウムは100Bq/kgである。
8,000Bq/kgの汚染土壌を再生利用するというのは、「新概念」だと、除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関するWGで資料が出ている。
(ちなみにこのワーキンググループは、非公開、審議会名や出席者すら非公開だったが、筆者が情報開示請求し、公開すべきと要望し、HPに記載されるようになったことを付け加えておく。これは環境省が自ら公開していた資料ではないのだ。)
「8,000Bq/kg以下を確認して再生利用した」と繰り返す東電
このように、除去土壌(汚染土壌)の再生利用とは、とてもセンシティブな問題であるのに、東京電力はいとも簡単に「再生利用しました」と繰り返す。
筆者が、どのような濃度のものを、どこに再生利用したのか、と何度問うても
「8,000Bq/kg以下を確認しました。」
「再生利用先は言えません」
を繰り返すのみである。
筆者は、環境省が進めている除去土壌(汚染土壌)の再生利用計画も、モニタリングなどの管理が必要で、住民への説明、情報公開を基本としているもので、8,000Bq/kg以下のものを自由に再生利用してよいという性質のものでは全くない、と何度説明しても、「関係者に迷惑がかかるので答えられない」のみであった。
福島県に「工事」の詳細を情報開示請求
筆者は、東京電力が「除染ではない原状回復工事」と主張する工事の中身を知るべく、福島県に情報開示請求した。
すると、600枚ほどの資料が開示された。そのうち、いくつかを紹介する。
「砕石の搬出」「砕石の撤去」など、廃棄物が発生する工事であることがわかる。
また、8,000Bq/kgを超えた118m3の廃棄物は「防球ネット、テニスコートマット」が主なものだと東京電力は説明した。
工事件名にある「テニスコート撤去」などで、高濃度の廃棄物が出る「除染類似作業」は、「特定汚染土壌取扱い業務」にあたり、除染電離則が適用される。
富岡の労基署に問い合わせると、「個別の事例に関して、コメントはできない。が、情報提供は随時受け付けている」とのことで、これらの福島県からの開示資料を労基署に送ることを筆者は予定している。
虚しい工事計画
以下は、Jヴィレッジの再生・復興計画である。
「徹底した除染の取組や放射線量を積極的に情報公開」という文言が虚しい。
実際は、103万㏃/kgという高線量のホットスポットなどを残したまま、聖火リレーを迎えようとし、そしてその情報は、どれだけ質問してもなかなか公開しなかった。
そして、今も、非公開の情報を多々、残したままだ。
それは、やはり「復興」オリンピックのしわ寄せがあったのではないだろうか、と筆者は考える。もっと丁寧に、工事を進めるべきではなかったか。
そして、もう一件、気になることがある。
福島県にもたびたび情報開示請求をしている筆者だが、このJヴィレッジの案件は担当部署は「エネルギー課」であった。原子力安全課でも、モニタリングをする放射線対策室でもない。除染対策課でも復興計画課でもなかった。
エネルギー課とは、電源立地交付金を受ける課、東京電力が「原子力立地自治体」と呼び、深い付き合いをする担当課である。
筆者は原発事故後、福島県庁を9年取材しているが、東京電力に問題があれば、比較的厳しい発言がある。しかし、エネルギー課は取材をしても、それがあまり見られない。Jヴィレッジの103万Bq/kgという数字を東京電力が口頭で気軽に報告したとしても、特に問題はないという。
(楢葉町や環境省には、東京電力は文書で報告している。)
福島県庁エネルギー課と、東京電力の近さが、取材を通して、一抹の不安を感じる。
一次資料:Jヴィレ汚染に関して説明があった東京電力の会見動画
https://twitcasting.tv/makomelo/movie/615763902 (5月18日)
https://twitcasting.tv/makomelo/movie/620780165 (6月8日)
(上記は東電説明が聞きづらいため、東電公式の動画も後ほど追加します)
(引用する際は、リンク掲載をお願いします)
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