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3行まとめ

・2月18日、神戸大学岩田教授が「クルーズ船に感染症の専門家が1人もいない」と告発動画を投稿。
・2月12日に検疫官が感染したことを受け、14日「感染症の専門家を派遣」というDMAT宛ての厚労省文書を筆者は入手。
・文書に書いてある「感染症の専門家は誰?」と情報開示請求をした。

関西弁まとめ

(長いので要約をつけました。関西弁なのは、結局誰のどの記事も記者のフィルターを通していることを心に留めて頂きたいためです)

・クルーズ船内の写真見たら、検疫とかぐだぐだやな、土足エリアに四つん這いとか防護服着たまま正座って、普通の病院でも絶対やらんやろ。
・わ、案の定、検疫官とか厚労省職員に感染拡大していってるわ…(計10人!)
・大学の先生が船内に入って「専門家1人もおらん、責任もってリーダーシップとってる人おらん!」て動画あげてはる。
・ん? DMAT宛ての厚労文書を手に入れたら「検疫官が感染してもたな!不安にさせてごめんな!専門家を派遣するから!」て書いてあるやん。ちょっと情報開示しよ。
・結果、不開示! 「専門家を派遣とは書いたけど、それは誰かはナイショ」てどういう意味!?
・人数と日数一覧は開示されたけど、どうも常駐で感染制御マネジメントしてはった方はおらん感じ。
・クルーズ船から日本の新型コロナ問題は始まったから、(五輪との関係も含め)クルーズ船対応はもっと検証が必要やと思う、今後のために。

クルーズ船検疫は、検疫官・厚労省職員らにも感染拡大

 2月3日から横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号内は、乗客乗員のみならず検疫関係者にも新型コロナウィルスが感染拡大した。

  筆者が調べたかぎり、検疫官、厚労省職員、内閣官房職員、DMAT看護師など10名がクルーズ船業務で感染した。
(恐らくこの件に関してまとまった公式リリースは無い。)

クルーズ船で業務にあたった関係者の感染一覧

公表日所属(年代)業務
2/12検疫官(50代)船内検疫
2/14救急隊員(30代)患者搬送
2/17厚労省職員(50代)船内事務・連絡業務
2/18DMAT看護師(30代)診療補助
2/20厚労省職員(40代)船内事務作業
内閣官房職員(30代)船内事務作業
2/24厚労省職員(40代)船内事務作業
検疫官(50代)船内業務
2/27検疫所運転手(50代)送迎(船外業務)
2/28検疫官(30代)検体採取の補助

2/18:神戸大学、岩田健太郎教授がYouTubeで告発「専門家が1人もいない」

 18日深夜に、神戸大学の岩田健太郎教授が、クルーズ船には「専門家が1人もいない」と告発する動画をwebに投稿した。
 現在は動画は削除されているが、下記は全文書き起こしである。

(岩田教授の動画書き起こしより)

常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない。

まさかここまでひどいとは思ってなくて、もうちょっとちゃんと専門家が入って専門家が責任を取って、リーダーシップを取って、ちゃんと感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。

https://note.com/chocolat_psyder/n/n37115c09d500

 岩田健太郎教授の様々な主義主張は置いておいて、果たしてクルーズ船に感染制御のマネジメントを取り仕切る専門家はいたのか、ということは筆者も疑問であった。
 検疫官や厚労省職員が次々と感染するような状況なのだ。

 下記は、クルーズ船の乗客で、日々、船内の模様をツィッターに投稿し続けていた「だぁ」さんによる、船内の検疫の写真である。
 「だぁ」さんのツィートを日々追っていた筆者は声をあげて驚いたのをよく覚えている。
 検疫と放射線防護は良く似ている、と教わったことがある。レッドゾーンとグリーンゾーンを分け、その境界でスクリーニングや除染、防護服の着脱をするからだ。
 また、防護服は着脱のときに汚染することが多い。できるだけ防護服が汚染されないようにすること、防護服の汚染を広げないようにすることが重要とも教わった。

 しかし、下記の写真を見てほしい。

「だぁ」さんは、クルーズ船内の様子を毎日発信し続けてくださった乗客の方

 防護服を着た方とスーツの方が混じり、土足のエリアで正座したり、四つん這いで手を付いたりしている。これで感染拡大防止の検疫は達成できるのだろうか? 
 と思っていたので、「専門家が1人もいない」と言う岩田教授の指摘は、筆者の疑問を膨らませたのだ。

(岩田教授の動画書き起こしより)

レッドゾーンとグリーンゾーンというんですけど、ウイルスが全くない安全なゾーンとウイルスがいるかもしれない危ないゾーンというのをきちっと分けて、レッドゾーンでは完全にPPE(個人用防護具)という防護服をつけグリーンゾーンでは何もしなくていいと、こういうふうにきちっと区別することによってウィルスから身を守るというのは我々の世界の鉄則なんです。
 
 ところが、ダイヤモンド・プリンセスの中はグリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別かつかない。

https://note.com/chocolat_psyder/n/n37115c09d500

境目の無い「不潔ルート」

 以下は、岩田教授の指摘に対して、橋本岳厚労副大臣が投稿したツィートである。(現在は削除済み)

 「不潔ルート」と「清潔ルート」の境界の空間に遮蔽が無く、汚染した防護服のルートが仕切られていないことがよく分かる。

橋本岳厚生労働副大臣がTwitterに投稿したクルーズ船内の写真
(現在は削除済み)

DMAT資料を入手「感染症の専門家を派遣」

 取材を続ける中、筆者は、厚労省がDMAT隊員宛てに発出した文書を入手した。
 12日に検疫官の感染が確認された後に発出された文書である。
 しかし同14日には、救急隊員の感染も確認された。

(入手文書。赤線は筆者)

「基本的な感染防護策が徹底されていなかったことが考えられます」

 12日に、検疫官が感染に至った原因として書かれているのは以下である。

・マスクの交換頻度が少なかったこと。
・有症者の部屋に入ったあと手袋を交換しておらず、手袋を着用したまま目や鼻、口など粘膜を触れることがあったこと。
・防護服の人と同一の部屋で作業していることがあったこと。
等、基本的な感染防護策が徹底されていなかったことが考えられます。

 やはり、防護服の方々と入り混じり、土足の部分に四つん這いになったり、防護服の方々ですら、土足の場所で正座するような状況だったのは間違っていたのだろう。

 そして、文書の2枚目はこう続く。

<感染症の専門家を派遣>

・活動者向けの感染防護の指導と活動拠点の環境管理等を徹底する。

 14日の文書にはこう記されているものの、18日にクルーズ船に入った岩田教授は「専門家は1人もいない」と言う。いったいどうなっているのだろうか?

(入手文書。赤線は筆者)

PCR検査を行ってもらえるのでしょうか?(DMAT隊員)

 余談だが、資料の末尾についていた「よくあるご質問」に
「船内で医療救護活動をおこなった後、PCR検査を行ってもらえるのでしょうか?」という質問があるのが、筆者は申し訳ないと思う。
 最前線で闘ってくださる医療従事者の方々に、PCR検査を受けて頂きたかった。無症状の国民みなPCR検査をしろと言っているのではない。
 感染者と日々接する医療従事者の方々が検査を希望しておられるのなら、それは必須だと思う。

 ちなみに、DMAT隊員で感染確認されたのは、筆者の知る限り和歌山から派遣されたDMAT看護師のみではないだろうか。

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/041200/d00203387_d/fil/20200218press1.pdf
(赤線は筆者)

 

 和歌山県は県知事の方針で、「国の方針に従わず」「PCR検査をどんどん」やおこなった。2月に和歌山の済生会有田病院で感染者が出た際、筆者は和歌山県知事の会見を毎晩のように書き起こしていた。
 和歌山県知事は「無症状者は他者に感染拡大させない」という勘違いはあったものの、「濃厚接触者のみならず、県内のあやしい肺炎は全てPCR検査させる」と常に会見で言い切っていた。どんどん検査せよ、という体制のもと、クルーズ船で活動していたDMAT看護師の感染がわかり、その後すぐに、クルーズ船で活動していたDMAT隊員、帰国チャーター機関係で活動していたDMAT隊員の全員をPCR検査した。
 筆者の知る限り、このような対応をとった県は和歌山県だけではないだろうか。(情報があれば教えてほしい)

2/25に情報開示請求「専門家は誰?」

 筆者はDMAT隊員に14日発出された「感染症の専門家を派遣」の文書を元に、それは具体的にどういう方か、情報開示請求をした。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号に派遣された「感染症の専門家」について関係する資料すべて。
令和2年2月14日に厚労省から出された文書「船内で医療防護活動に従事されている皆様へ」(添付)に記載されている「感染症の専門家」について関係する資料全て。

 1ヶ月の延長後、2か月後に決定通知書が返ってきた。

専門家は「不開示」

「専門家の氏名、および所属機関については、個人に関する情報であって…不開示とした」

黒塗りの「専門家一覧」

 特定できない一覧だと予想されるが、念のため開示されたものを請求した。以下である。

 筆者は、これを見て、予想外のことに驚いた。
 船内に派遣された感染症専門家の数名が黒塗りだったわけではないからだ。
 これは、単に、船内で活動した感染症の知識がある医師、看護師、検査技師の一覧なのではないだろうか。
 そして船内の活動日数。細切れである。常駐した方、それに近い活動をされた方がいるように見えない。

 前述の岩田教授の動画にはこういう発言もある。

(岩田教授の動画書き起こしより)

 環境感染学会が入り、FETP(Field EpidemiologyTrainingProgram 実地疫学専門家養成コース)が入ったんですけど、あっという間に出て行ってしまって中がどうなっているかよくわからないという状態でした。

もうちょっとちゃんと専門家が入って専門家が責任を取って、リーダーシップを取って、ちゃんと感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです。

我々的には超非常識なこと平気で皆さんやってて、みんなそれについて何も思っていないと。聞いたら、そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない。

https://note.com/chocolat_psyder/n/n37115c09d500

 情報開示の結果からは、黒塗りの匿名であれど、感染制御のマネジメントができる専門家が、責任をもって取り仕切ったわけでは無さそうに見える。
 常駐して感染制御をしようとしたリーダーは、匿名であっても全く見えてこない。

全ては再発防止、後世のために

 クルーズ船関連の報告書は、厚労省やDMAT、国立感染症研究所のものなどいくつか出ているが、感染制御が適切に行われたかどうかの記述を筆者は目にしたことがない。

 緊急の非常事態で、適切に行われなかったこともあるだろう。
 しかし、いつだって非常事態は緊急に来るのだ。だからこそ備えねばならないのだ。
 現場で命がけで働いてくださった医療関係者の方々には感謝と敬意しかない。
 だからこそ、防護を、感染制御を最大限にできるように、今後、同様のことが発生したときに、今回の知見を生かせるように、情報保存と検証は必須なのだ

 また、筆者は、感染者への差別、医療従事者への差別は、このクルーズ船の問題が尾を引いているのではないかとも考える。

 クルーズ船の乗客乗員以外の検疫官、厚労省職員らに相次いで感染者が増えたこと。しかしその問題究明はなされていないこと。
 現在の対応は、クルーズ船対応を検証しその知見を生かし、同様の状況にはならないと可視化できていないことも差別を助長する一つなのではとも感じる。

 クルーズ船の乗客らが、下船して各地に帰宅してから、感染が判明していったのも悲劇であった。これも乗客らがいわれのない差別を受けたように感じる。

 2月14日の厚労省文書の「感染症の専門家を派遣」はいったい誰だったのか。クルーズ船の感染制御の責任者は果たして存在したのか。
 外国籍の船で、難しかったことはよくわかる。 
 犯人探しではなく、 同じような状況で、同じ間違いを繰り返さないために、もしくは最善の選択をより早く再現するために、 検証が必要なのだ。

 そのために、問題に向き合うこと。調査し情報を残すこと。
その情報を広く公開し、私たちが思考・議論することが必要なのだと筆者は思う。

訂正・追加履歴

2020/5/23 14:10 関西弁まとめに「 検疫官が感染してもたな!不安にさせてごめんな! 」を追加。

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