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3行まとめ

・「辺野古のサンゴは移している」発言は「福島はアンダーコントロール」を思い出させた。

・2013年当時、深刻な汚染水の漏えい事故が8月19日に発生し、28日にレベル3の原子力災害と新たに評価された。

・その10日後の9月7日に、安倍総理は「福島はアンダーコントロール」と発言、東京電力も動揺していた。

 

「辺野古のサンゴは移している」

1月6日に放映されたNHKの『日曜討論』で、安倍総理が辺野古の基地移設問題に関して、

「土砂の投入にあたって、あそこのサンゴは移している」

「絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、砂をさらって、別の浜に移していくという環境の負担を抑える努力もしながらおこなっている」

と述べた。

それに対して、玉城デニー沖縄県知事が「それは誰からのレクチャーでしょうか。現実にはそうなっていない」とSNS上で抗議していた。

 

「福島はアンダーコントロール」

筆者は、この発言に関して、2013年のブエノスアイレスでのIOC総会での、東京にオリンピックを誘致する際の安倍総理のスピーチや質問に対する回答を思いだした。

筆者はライブ中継で、このときのスピーチを聞いていたが、(2013/9/7 安倍首相のプレゼンテーション 出典:首相官邸ホームページ  )

「福島の状況はアンダーコントロール」

「汚染水による影響は0.3km2の範囲内に完全にブロックされている」

との発言を聞き、腰を抜かすほど驚いたからだ。

安倍総理の発言を裏付ける新しい資料が何か出たのか、と、東京電力の資料を深夜に漁ったことを覚えている。

 

直後の東京電力の定例会見では、この安倍総理のIOC総会での発言への質問が相次いだ。

記者18人中、筆者も入れて11人が追及した。

「汚染水はブロック? 福島はアンダーコントロール? 本当に東京電力はそう思っているのか?」

 

汚染水漏れの事故が相次ぎ、レベル3の事故が「アンダーコントロール」発言の20日前に発生

東京電力自身が毎日、海水の測定値を出しており、当時、港湾内でも放射性物質が高い値の部分があった。

そして港湾内外の海水は潮の満ち引きで毎日50%程度入れ替わる。

また、告示濃度限度を超えた汚染水が時々流れているK排水路の排水口は、当時はまだ港湾の外にあった。

 

①2013/4/5 地下貯水槽漏えい

そして「福島はアンダーコントロール」発言の4か月前である同年4月5日には、

地下貯水槽から高濃度の汚染水が大量に漏えいし、深夜1時半から臨時会見が開かれるほどの漏えい事故だった。

 

(参考:当時、筆者が臨時会見に参加した直後のコラム 貯水槽から濃縮塩水(Srたっぷり!)が漏れ漏れの件 )

 

➁2013/6~ 護岸エリアの地下水汚染(海にそのまま漏えい)

「福島はアンダーコントロール」発言の3カ月前である同年6月には、海からすぐの護岸エリアの地下水で高濃度の汚染が見つかる。

地下水観測井No.1で見つかった汚染から、周囲にたくさんの観測井が掘られていき、現在も汚染は広範囲に広がっている。

地下水観測井の場所によっては現在も最高値を更新し続けている。

このエリアの汚染された地下水はそのまま海に流れていたため、鋼管矢板を打ち「海側遮水壁」が作られた。

(しかし、上流部の地下水対策が取られなかったため、開口部を作っていた 参考記事:http://oshidori-makoken.com/?p=812

(開口部が閉じられたのは2015年10月である。)

また、この2013年7月に採取された地下水観測井No.1-2は、ストロンチウム90が500万Bq/Lと超高濃度だったのだが、

(排水の告示濃度限度は30Bq/Lのため、約10万倍の高濃度汚染である)

それが公表されたのは7ヶ月後の2014年2月であった。

ストロンチウム90の時系列を考えると、IOC総会の9月には判明していたはずなので、この高濃度汚染の公表が遅れたのも、オリンピック誘致の影響ではないのかという質疑が2014年2月の会見では相次いでいた。

 

➂2013/8/19 H4エリアタンク漏えい。レベル3の事故

また「福島はアンダーコントロール」発言の3週間前である同年8月19日には、H4エリアのタンクから高濃度汚染水が漏えいした。

それは、10日後に「レベル3」の原子力事故と評価される大規模なものだった。

(のちに、このタイプのタンクは漏えいリスクが高く、全て解体が決定される。これが今も続くフランジタンクの解体作業である)

2011年3月の福島第一原発事故がINES評価で「レベル7」とされて以来、筆者が取材して知る限り、

この2013年8月のH4エリアの漏えい事故が、唯一、新たに「レベル3」と評価された原子力災害である。

 

新たにレベル3の汚染水漏えい事故となった10日後に、安倍首相が世界に向かって「福島第一はアンダーコントロール!」と発言したのだ。

東京電力の会見を取材し続ける記者たちにとって、どれほどの衝撃かおわかり頂けただろうか。

 

東京電力「総理の発言について、政府の方に確認しました」

IOC総会での安倍総理発言について、東京電力に質問が相次いだ。

興味深かったのは、東京電力も、「総理の発言を聞いて、政府に問い合わせた」と繰り返したことだ。

その理由は「我々と考えが同じかどうか、その部分について確認をした」とのこと。

 

重要な質疑を抜粋する

ーー汚染水はブロックされているのか

「影響は少ないと考えている」

ーー政府はどの部分をとらえて、アンダーコントロール、ブロックという発言が出たのか

「福島第一の現状と海洋モニタリングの結果を踏まえての発言だと聞いている」

ーー汚染水の漏えいが相次いでいるが、海洋モニタリングのどの部分をとらえてか

「その点についてはそれ以上は承知していない」

ーー汚染水の事故はレベル3に引き上げられたばかり、何をもって安定状況を維持していると言い切れるのか

「福島全体が安定していると言ったわけではない」

ーー菅官房長官は(港湾は)シルトフェンスで覆われていると会見で発言していたが

「シルトフェンスはトリチウムを防ぐ力はない」

参考:動画  2013/9/9 東京電力 定例記者会見 ニコニコ動画
参考:起こし 2013/9/9 jaikoman氏による書き起こし

 

まとめ

東京オリンピック誘致の際に、安倍総理が一番初めに言及したのは福島第一原発事故のことであり、

そしてIOC総会の質疑の際に、会場から最も質問されたのは福島第一原発事故のことであった。

しかし、その安倍総理の発言内容は、東京電力が驚いて政府に確認を入れるほどのものであった。

 

筆者は、このとき、総理が世界に向かって事実と異なることを言うことよりも、

それを理解し抗議する日本国民が少ないと官邸に思われているか、もしくは官邸周辺も事実を把握していないことに愕然としたのだ。

私たちは舐められているのだと。

東京電力の記者会見は、インターネット上で公開されており、当時も今でも見ることができる。

福島第一原発は2013年当時、汚染水の漏えいが相次ぎ、全く安定していなかったことは会見を見ていれば誰でも把握できた。

こんな分かり切った大嘘を世界に向かって公言してもまかり通ると思われていることが、悲しく悔しかった。

 

「辺野古のサンゴ移設」発言の問題も、森友・加計学園の問題を始め、私たちは舐められていると感じる。

舐めた発言や説明が通らないよう、発言の根拠となる情報開示を求め、

いい加減な発言は許さない、うやむやのまま問題を風化させるのは許さないと、厳しい態度で臨む市民を増やしたい。

そのためには、情報を集め、理解し判断していくという作業が必要である。

それは大変な労力が必要だが、それこそが誰かまかせにせず、社会を作っていく必要な作業だと考えている。

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