3行まとめ

・3月30日、第3回中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会が開催された。

・全国の自治体の公共事業で再生利用される汚染土壌の汚染レベルは、上限8,000Bq/kgに決まった。

・「世界に前例のない一大ナショナルプロジェクト」ということだが、被ばくの安全性評価をするワーキンググループは非公開

 

汚染土壌の再生利用の目的は、最終処分量を減らすため。

昨年7月から、中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会が始まり、筆者は取材を続けている。

中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会

過去記事:放射性廃棄物を「再生利用」!? その他、DAYS JAPANなど。

 

汚染土壌の再生利用という議題は、30年以内に福島県外に最終処分場を作るということが決まったとき(2014年JESCO法)から出てきた。

最終処分量を減らすため、再生利用量を増やす、ということが目的である。

井上環境副大臣に取材した際も、たびたびそう発言している。

(撮影おしどりケン)

(撮影おしどりケン)

30日に出た「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」(案)にもたびたび記載されている。

県外最終処分の実現に向けては、まず最終処分必要量を低減することが鍵となる」

(1P「はじめに」より)

「全量をそのまま最終処分することは、必要な規模の最終処分場の確保等の観点から実現性が乏しいと考えざるを得ない。

再生利用の対象となる土壌等の量を可能な限り増やすことにより、最終処分量の低減を図る。

(3P、「基本的な考え方」より)

中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略(案)より

 

汚染土壌の再生利用による追加被ばくは年に10μSv以下で

対象となる汚染土壌は、10万Bq/kgを超えるもの。その総発生見込み量は、2015年1月時点における推計値で、約2.200万m3である。

この汚染土壌を、様々な技術(分級処理、熱処理、洗浄処理)などで減容化し、8,000Bq/kg以下のものは再生利用するという。

その技術はまだ実用段階では無いが、「全ての技術開発の完了を待つことなく、技術的に可能な分野から順次再生利用の実現を図る」という。

(赤字は中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略(案)4P「基本的な考え方」より抜粋)

追加被ばくは年10μSv以下に抑えるように、どういう濃度のものを、どのように使っていくかは、今後、議論されるという。

 

再生利用の基準:3,000Bq/kg(福島)から8,000Bq/kg(全国)へ

「被ばく線量を 10μSv/ 年以下に低くするための対策を講じつつ、管理された状態で利用することは可能」

ということは、2011年から再生利用の考え方として出されている。

管理された状態での災害廃棄物(コンクリートくず等)の再生利用について_2011年12月27日

福島県内の災害廃棄物の処理の方針_2011年6月23日より

https://www.env.go.jp/jishin/attach/fukushima_hoshin110623.pdf 福島県内の災害廃棄物の処理の方針(2011年6月23日)より

https://www.env.go.jp/jishin/attach/fukushima_hoshin110623.pdf 福島県内の災害廃棄物の処理の方針(2011年6月23日)より

 その、追加被ばくは年10μSvまで、という考え方を元に、2011年12月に環境省は、福島県内の災害廃棄物の再生利用に関する新たな基準を出した。

汚染がれきを再生利用するための基準がなく、大量のがれき処理に悩む福島県の要望を受け、3,000Bq/kg以下であれば再生利用できるという方針である。

それが、今回、全国で上限8,000Bq/kgまで再生利用できるという方針に変わったのである。

前述の、福島県内で3,000Bq/kgまで再生利用という方針は、復興を加速させたい福島県の要望が元であった。

しかし今回の全国で8,000Bq/kgまで再生利用という方針は、要望があったわけではなく、最終処分量を減らすためという目的である。

 

非公開の安全性評価ワーキンググループ

どのレベルの汚染度の土壌を、どのように使用していくかは今後、検討会の中で議論されるという。

過去の検討会では「地下水溶出経路による内部被ばくについても評価すべき」という意見があった。

 

今回の再生利用は、コンクリートくず等のがれきではなく、土壌が対象である。

汚染土壌の周囲に、遮蔽のための非汚染土壌をかぶせて再生利用する計画である。

(「土を土で遮蔽をする」と環境省は説明していた。)

なので、雨水や地下水などで、汚染土壌から放射性物質が流出し、植物に移行した場合、農作物やそれを飼料とした家畜などによる内部被ばくの評価も必要という意味である。

今回の検討会で、そのような評価をするところはどこか。

環境省に問うとワーキンググループがあるという。

正式名称は「除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関する安全性評価検討ワーキング」とのことであった。

現在、このワーキンググループの議論、資料、メンバーも非公開である。

環境省は、「ワーキングの評価は親検討会(この再生利用戦略検討会のこと)に報告しているので問題ないと思います。メンバーについては、公開できると思いますが…今、現在公開はしていないので、今、ここで私の一存でお答えはできません。」

とのことであった。

再生利用のインセンティブ=お金?

 

全国の自治体の公共事業で、汚染土壌の再生利用を推進していくことが決まった。

しかし具体的な再生利用先が見つからなければ「絵に描いた餅」になる。(第2回検討会でこの言葉が出てくる)

そこで検討されているのが「インセンティブ」である。

20160330_ (4)

 

第3回検討会終了後、井上信治環境副大臣に、

再生利用戦略(案)に盛り込まれた「インセンティブ」とは具体的に交付金を指すのかと問うと、

 

 

20160330_ (6)

「今後、検討になるが、具体的な形で付与していく」との回答であった。

 

 

 

 

 

2016年度に再生利用のモデル事業

汚染土壌の再生利用のモデル事業を2016年度に行うことも決まっている。

その結果を元に、「再生利用の手引き」を作成し、全国に展開する。

モデル事業を行う地域は決まっているのか、と井上副大臣に問うと、場所の選定は調整中とのことであった。

環境省に同じく問うと「昨日、モデル事業に関する予算が決定されたばかりで、場所の選定はまだこれからなのです」とのことであった。

IMG_9833

http://www.env.go.jp/guide/budget/h28/h28juten-2.pdf 「平成28年度環境省重点施策」 より

 

福島県飯舘村の蕨平で、放射性廃棄物の減容化処理施設が作られている。

ここで作られたものも、「再生資材」となっている。

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建設中の福島県飯舘村蕨平の減容化施設(撮影2015年9月、おしどりケン)

 

蕨平で、再生利用のモデル事業が始まることはないのか、と環境省に問うと

「ブツを作るところまでで、それも対象物として念頭にはある。しかし(再生資材は)蕨平で出たものと対象と特定しているわけではない。場所はまだ未定」とのことであった。

参考: 飯舘村蕨平地区における 可燃性廃棄物減容化事業について

 

原子炉等規制法では、再生利用は100Bq/kg以下

原発事故前、原子炉等規制法で規制されている、放射性廃棄物を再生利用できるクリアランスレベルは100Bq/kg以下であった。

原発事故後、放射性物質汚染対処特措法ができ、8,000Bq/kgを超えるものは、指定廃棄物として国が処理をすることとなった。

つまり8,000Bq以下のものは一般廃棄物として処理できる。

その中で、再生利用される可能性ある放射性廃棄物も出てくる。

他の省庁や各県で独自の基準が作られていった。

例えば、農林水産省は200Bq/kg以下の下水汚泥は肥料として利用可とした。(2011年6月~2013年3月まで)

http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_hiryo/caesium/

また、腐葉土や牛糞などを原料とする肥料は400Bq/kg以下、飼料は300Bq/kg以下とした。(2011年8月~2012年3月まで)(しかし家きん用飼料は現在も160Bq/kg以下となっている)

http://www.maff.go.jp/j/syouan/soumu/saigai/shizai.html

山形県など、自治体で独自の基準を作った地域もある。

 

 

原子炉等規制法の100Bq/kgと、放射性物質汚染対処特措法の8,000Bq/kgという数字は、ダブルスタンダードではないのか。

環境省は、今までこう説明していた。

100Bq/kg(原子炉等規制法)→廃棄物を安全に再利用できる基準

8,000Bq/kg(放射性物質汚染対処特措法)→廃棄物を安全に処理するための基準

 

しかし、今回の決定では、全国で、8,000Bq/kg以下の土壌を再生利用していく。

今までの説明に矛盾が生じるのではないだろうか?

環境省に取材したところ、こう説明された。

「100Bq/kgというのは、口にいれても何をしてもいい、という再生利用の基準です。

今回決まった、土壌の再生利用の8,000Bq/kgというのは、きちんと管理をして遮へいをして使っていくという基準で意味合いが違います。」

ーーしかし、管理・遮へいしても、8,000Bq/kg以下で再生利用していく、というのは、原子炉等規制法に触れるのではないのか?

「いえ、原子炉等規制法は原子力施設のものです。今回の原発事故の関係で出た放射性廃棄物、除染の土などは別です。放射性物質対処特措法です。原子炉等規制法と、放射性物質対処特措法は別の法体系です。」

ーーしかし、同じ国内法なので整合性はどうするのか?

「そうですね、国内法で同じ規制する法律なので、一定の法的安全性といった意味で、どういうレベルだったら規制下におくのか、どういうレベルだったら規制しなくていいのか、そういう整合性、関連性はもちろん我々が考えてなくてはいけないと思っています」

世界に前例の無い一大ナショナル・プロジェクト

この、汚染土壌の再生利用は「世界に前例のない一大ナショナル・プロジェクト」だという。

原発事故後、様々な基準が引き上げられたり、「世界に前例の無い」ことが行われている。

原発事故前、日本の国内法では、原子力施設周辺における被ばく線量を年間1mSv以下とし、ICRP1990年勧告の「公衆の線量限度は1mSv/y」にならっていた。

しかし原発事故後、年間20mSv以下は避難指示解除の要件となった。

ドイツの放射線防護庁に取材すると、ドイツでは原発作業員の年間線量限度が20mSvということであった。

その値を日本では、子どもにも当てはめるのである。

 

筆者は、原子力の平和利用を推進する国際シンポジウムを取材した際、出席していた研究者にこんなことを言われたことがある。

「福島の原発事故のリスクを、除染して住む、と福島の住民が受け入れ、それを世界に発信することは重要」

筆者は驚き、その後、原子力を推進する研究者複数に取材し、親しくなった後で確認していった。

まとめるとこうである。

「今まで『事故は起こらない』と原発をセールスしてきた。

しかし福島の事故後のセールスは『事故が起こっても大丈夫』と原発を売っていく。

なので、福島第一原発事故後、住民が除染をして住み続ける、というモデルケースを世界に発信することは重要。

広島と長崎があった日本だからこそ、被ばくの恐怖を知っている日本だからこそ、

福島の原発事故後『大丈夫』と発信することに意味がある。」

2012年にこの件を取材した筆者は、本当にそんな考えがあるのだろうか、と半信半疑だった。

しかし、2014年に、年間20mSvで住民は避難解除となった。

そして、2016年に、全国で汚染土壌の再生利用という世界に前例の無いプロジェクトが始まる。

最終処分量を減らすため、再生利用量を増やす、ということは実質、全国に埋設して最終処分をするということである。

 

原発事故が発生した際の前例になるということは、世界に対して、私たちは責任を負っている。

きちんと議論はされているのか、情報公開はなされているか、これからも注目していきたい。