3行まとめ
・北茨城市の平成26年度の甲状腺検査において、原発事故当時18歳以下の受診者3,593名のうち3名が甲状腺がんと診断された。
・平成25年度、26年度は一巡目と位置づけ、平成28年度から二巡目の検査をするかどうか検討中。
・「放射線の影響は考えにくい」と評価した「甲状腺超音波検査事業検討協議会」のメンバーは医師のみで、
放射線防護、線量評価の研究者は入っていない。
甲状腺検査
8月25日、北茨城市役所から、平成26年度の甲状腺超音波検査事業の結果が公表された。
その内容は、東日本大震災時、福島第一原発事故発災時に北茨城市に居住していた18歳以下を検査対象者6,151名とし、そのうち3,593名が超音波検査を受け、3名が甲状腺がんと診断されたというものであった。
北茨城市役所に取材したところ、この「A1,A2,B,C判定」は福島県の甲状腺検査と同様の区分けのものであり、
「A2」が経過観察となっているが、福島の基準と同様、のう胞20ミリ以下、結節5ミリ以下という区分けをしているとのことであった。
年齢区分けでの公表はしない
平成25年度の結果は、年齢別の公表をしているが、平成26年度の検査では、甲状腺がんの診断が3名出たため、
特定されるのを避けるという趣旨で、平成26年度は年齢別の公表はしないと北茨城市で判断をした。
平成25年度の年齢別の実施状況は下記である。
「放射線の影響は考えにくい」と誰が判断したか
「放射線の影響は考えにくい」と判断したのは、『専門家や医師を含む委員で構成された「北茨城市甲状腺超音波検査事業検討協議会」』とのことである。
それはいったい、どのようなメンバーか。
北茨城市に取材すると、協議会の委員は非公表、とのことであった。
放射線防護や線量評価の専門家が加わっているのか、と問うと、医師のみということであった。
詳しくは明かせないが、市の病院の医師や、大学(大学名は非公表)の先生がた、甲状腺乳腺外科の先生も入っている、とのことであった。
この甲状腺超音波検査について議論をしていた「市民健康調査検討協議会」のメンバーと同じかかぶっているか、と問うと
健康調査検討協議会と甲状腺検査検討協議会は異なる、委員については明かせないとのことであった。
市民健康調査検討協議会の名簿は下記である。
甲状腺検査の今後
平成25年度と平成26年度の検査は一巡目と位置付けており、二巡目の検査を平成28年度から実施するかどうか検討中。
二巡目は市長判断と、また市民健康調査検討協議会を再開しての検討となる予定。
平成27年度は今のところ実施しない、とのことであった。
甲状腺超音波検査の集団検診を行っているのは、日立メディカルセンターで、データの保存も日立メディカルセンターである。
平成23年3月に北茨城市に居住し、現在も住んでいる方が対象だが、
原発事故当時、北茨城市に住んでいて、その後、進学、引っ越しされた方々も、住民票などがあれば自己申告で受診可能とのことであった。
甲状腺超音波検査で、B判定以上は、通常の保険診療に移行する。
まとめ
北茨城市の甲状腺検査結果は「放射線の影響とは考えにくい」という評価がついていたが、
その評価をした専門家は非公表であった。
福島第一原発事故における放射性ヨウ素は、原発から南方向への拡散が高濃度とされている。
そのプルーム(放射性雲)は、降雨による土壌の沈着が無かったので
福島第一原発から北西方向の汚染(飯舘村方向)ほど警戒されていないため、初期被ばくの評価がほとんどされていない。
事故から数か月たってのWBC(ホールボディカウンター)では、半減期8日の放射性ヨウ素は検出できない。
筆者はDAYS JAPAN7月号と8月号で、甲状腺の専門医と疫学者が、それぞれ異なる理由で福島周辺県、特に茨城県の県北地域での甲状腺検査の必要性があると訴えていることを記事に書いた。
福島県の甲状腺検査評価部会の部会長、清水一雄先生も同意見であった。
次の記事で、その内容を簡単にまとめたい。
資料:市民健康調査検討協議会、発言要旨
第1回 北茨城市民健康調査検討協議会(2012年11月22日開催)
第2回 北茨城市民健康調査検討協議会(2013年1月30日開催)
第3回 北茨城市民健康調査検討協議会
資料:この甲状腺超音波検査に関する講演会