4行まとめ
・4m盤(護岸エリア)の地下水が地表に達した翌日、至近の測定地点の海水が最高値を更新。
・セシウム137の測定値が最高値になったが、トリチウム、ストロンチウム90の測定値はまだ出ていない。
・海水の測定値が最高値を更新したのは、昨年10月に海側遮水壁を閉合して以降、初めて。
・4m盤の溢水対策は、一日の降雨の最大既往量でしか試算をせず、豪雨が続いた場合の積算の降雨量は試算をせず、
対策不足だったことを、東京電力は認めた。
(併せて下記もお読みください)
取材メモ:【取材メモ】 気象庁降水量、バキューム汲み上げ時刻&汲み上げ量、地下水ドレンポンドBの水位の相関
地下水位が地表に達したあと、付近の海水のセシウム137濃度が最高値を更新
9月20、21、22日と、地下水ドレンポンドBの地下水位が地表に達した。
東京電力によると、4m盤(護岸エリア)の地下水は、地下水観測井戸No.1などがあるNO.1エリアなども同様に地下水が地表に達した、と考えているとのことであった。
4m盤(護岸エリア)の地下水は、高濃度汚染されている部分もある。
そして昨年10月に海側遮水壁を閉合してから、汚染度がまた上昇した。
同時に、港湾の海水の汚染度は下降傾向のため、海への汚染水への流出は、ある程度低減したとみられている。
切れ目を閉合したことにより、海への汚染水の漏えいは低減し(測定値は下降)
護岸エリアに汚染水はとどまった(測定値は、各地で最高値を更新)という状態である。
つまり、海側遮水壁の切れ目を閉合するまで、かなりの汚染水が海へ漏えいし続けだったことが推察される。
下記が港湾(海水)の測定地点である。
港湾内の海水サンプリング箇所
下記が、地下水ドレンポンドの位置である。
地下水ドレンポンドA~E
海水の測定点の図に、地下水ドレンポンドを描き足した。
赤いマーカーを引いているところが、今回、最高値を更新した測定地点である。
1~4号機取水口北側と1号機取水口が21日の測定で、セシウム137がそれぞれ74Bq/L、95Bq/Lであった。
(セシウム137の排水の告示濃度限度は90Bq/Lなので、95Bq/Lというのは法令違反である。)
地下水ドレンポンドと海水測定地点の位置関係
21日の測定で、2か所が最高値を更新した。
海側遮水壁を昨年10月に閉合してから、海水の測定値は下降傾向で、最高値を更新することは一度も無かった。
今回、海側遮水壁閉合以降、初めて、海水の測定値が最高値を更新した。
溢水のタイミングとドレンポンド至近の測定地点の値を表にした。
最高値 | 32 2013 10/11 |
74 2016 9/21 |
320 2013 8/12 2015 5/29 |
22 2015 9/7 |
95 2016 9/21 |
290 2015 5/29 |
25 2015 9/7 |
110 2015 9/7 |
240 2015 5/29 9/14 |
32 2015 9/7 |
120 2015 9/7 |
590 2015 7/29 |
||
日 | 時 | 1~4号機取水口内北側 (東波徐堤北側) |
1号機取水口 (遮水壁前) |
2号機取水口 (遮水壁前) |
1~4号機取水口内南側 (遮水壁前) |
|||||||||
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Cs-134 | Cs-137 | 全β | Cs-134 | Cs-137 | 全β | Cs-134 | Cs-137 | 全β | Cs-134 | Cs-137 | 全β | |||
19 | 6:30~ 7:00 |
6.9 | 44 | 75 | 6.1 | 33 | 54 | 7.6 | 41 | 62 | 8.4 | 49 | 67 | * |
20 | 7:08~ 7:25 |
7.3 | 47 | 67 | 6.6 | 37 | 57 | 6.2 | 40 | 54 | 5.8 | 31 | 59 | |
21:57 | 溢水 O.P.+3915mm(地表面に達する) | |||||||||||||
21 | 7:37~ 7:58 |
13 | 74 (最高値) |
90 | 17 | 95 (最高値) |
140 | 14 | 85 | 110 | 15 | 81 | 130 | * |
22:59 | 溢水 O.P.+3915mm(地表面に達する) | |||||||||||||
22 | 7:29~ 7:46 |
8.1 | 46 | 73 | 9.5 | 52 | 70 | 7.9 | 51 |
88 |
8.8 | 60 | 99 | * |
18:25 | 溢水 O.P.+3915mm(地表面に達する) | |||||||||||||
23 | 7:20~ 7:38 |
6.5 | 35 | 60 | 7.4 | 39 | 59 | 6.3 | 38 | 71 | 7.1 | 48 | 73 | * |
24 | 6:40~ 6:55 |
3.9 | 26 | 48 | 5.5 | 28 | 55 | 3.3 | 23 | 67 | 5.2 | 24 | 47 | * |
4m盤(護岸エリア)の地下水の汚染
4m盤(護岸エリア)の地下水の汚染は、昨年10月に海側遮水壁を閉合してから、上昇している。
2016年に最高値を更新した地点を赤で、2015年10月閉合後に最高値を更新した地点を緑で下記に示した。
護岸エリアの地下水の測定点の33地点のうち、16地点は最高値を更新しているので、ほぼ半分(33地点のうち、16地点)である。
護岸エリアの地下水観測孔。
赤いマーカーは2016年に最高値更新、緑のマーカーは海側遮水壁閉合後の2015年に最高値を更新。
各観測孔の最高値。
赤いマーカーは2016年に最高値更新、緑のマーカーは海側遮水壁閉合後の2015年に最高値更新。
下記に、地下水が地表に達した時点で、高濃度汚染がみられる地下水の分析結果を表にした。
表でわかるように、セシウム濃度・全β濃度・トリチウム濃度が全て高いものや、
全β濃度が高いもの、逆にトリチウム濃度のみ高いものなど、地下水の汚染の核種組成はバラバラである。
そのため、汚染水の漏えい源は複数あると評価されている。
地下水観測井NO. | 1 | 1-6 | 1-12 | 1-14 | 1-16 | 1-17 | 排水の告示濃度限度 |
Cs-134 | ND(0.44) | 5,800 | ND(1.8) | ND(4.4) | ND(1.1) | ND(0.56) | 60 |
Cs-137 | ND(0.54) | 32,000 | 2.7 | 10 | ND(0.52) | ND(0.62) | 90 |
全β | 14,000 | 350,000 | ND(17) | 33,000 | 12,000 | 110,000 | *Csが無ければ全βはSr-90の寄与の可能性が高い |
H-3 | 57,000 | 4,300 | 28,000 | 2,800 | 1,300 | 45,000 | 60,000 |
Sr-90 | – | – | – | – | – | 30 |
地下水観測井NO. | 1 | 1-6 | 1-8 | 1-14 | 1-16 | 1-17 | 1,2号ウェルポイント | 排水の告示濃度限度 |
Cs-134 | ND(0.46) | 4,800 | 37 | 2.7 | ND(0.61) | ND(0.50) | 50 | 60 |
Cs-137 | ND(0.53) | 27,000 | 230 | 9.1 | ND(0.58) | ND(0,59) | 280 | 90 |
全β | 13,000 | 330,000 | 3,300 | 27,000 | 19,000 | 110,000 | 240,000 | *Csが無ければ全βはSr-90の寄与の可能性が高い |
H-3 | 分析中 | 分析中 | 分析中 | 分析中 | 分析中 | 分析中 | 分析中 | 60,000 |
Sr-90 | – | – | – | – | – | – | – | 30 |
東京電力の対策の計画は不十分、と認める
海側遮水壁が閉合してから、4m盤(護岸エリア)の地下水の水位が上昇した。
そのため、梅雨や豪雨などの場合、地下水が地表に達することが予想された。
梅雨の時期などの溢水対策は話し合われてきたが、その際、計画に使用した降雨量の既往最大値は一日あたりのものであった。
筆者はたびたび、台風の時期の一カ月の降雨量をなぜ使用しなかったのか、と会見で質問したが、回答は得られなかった。
後に、ぶら下がり取材で確認すると、
「指摘のとおり、一日の最大降雨量のみで試算したため、積算での降雨量に対応できなかった」とのことであった。
今後、どこまでの豪雨に堪えれるか試算するか、と問うと、
「試算はしない、とりあえず溢水しないように対策を講ずる。現在、稼働しているポンプで汲み上げを続ける」とのことであった。
下記の気象庁のデータから東京電力は一日の最大既往量を出した。一カ月の最大既往量も容易に試算できるのだが…
余談:会見者は理解せず
余談だが、会見者の川村慎一氏に質問すると、台風の時期の降雨量での既往最大値は考慮しなかったのか、
と質問すると、「一日平均4mm×365日のでしか評価していない」と繰り返された。
最終的に「台風の値の平均などどうやって出すのか」と問われたため、
御社が、浪江町の気象庁の40年ほどの統計データや最大値を使って試算しているため、それを踏まえて、
台風の時期の既往最大値や1ヶ月の積算の最大値、もしくは月平均の値を使って試算しなかったのか、と質問しているのだが…
と、質問の主旨を理解してもらうのに時間がかかった。
会見終了後、本店広報に、状況を理解している人間に会見担当を担ってほしい、
質疑の時間を長くとりたくないが、御社の資料、計画すら把握していない方が会見担当だと、
質問を理解してもらうために時間がかかる、と抗議すると、
「それはおっしゃるとおりです、失礼しました、後で説明しておきます、
そういうときは、『後で○○さんに説明を聞いてください』と、質疑の最中で言ってください」
と言われた。
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